全国メガソーラー問題シンポジウム開催のお知らせ 平成30年8月16日
ここは、房総半島南部、千葉県鴨川市の山中です。
この地域は三浦層群と言われる、力のある岩盤層によってとても豊かな森が太古から保たれ、それが素晴らしく豊かな生態系を育み、力のある水が湧き出してふもとの暮らしを千年万年と支え続けてきました。
今やここは、千葉県内では最も生態系豊かな森の一角と言えるでしょう。
この山の頂部一体、300ヘクタールという見渡す限りの広大な範囲の木々を伐り、総延長3キロメートルという広大な範囲で尾根を削り取り、谷を埋めて、造成される、日本最大級のメガソーラー(大規模太陽光発電設備)建設の計画が進んでおり、今回、その計画地踏査にうかがいました。
計画地とその周辺一帯の山域に無数の谷が刻まれ、そしてそこには川底からも山襞からも湧水が染み出し、それが今もなお、渓流の魚やカジカなど、今や貴重な川の生きものを育みます。
ひとたび山が削られると、山が本来保ってきた貯水機能、洪水調整機能、浄化機能も失われます。
森が水を貯えなくなった分、こうした大規模開発においては造成の際、表面を流れる水をいったん蓄えて調整する、巨大な調整池がいくつも建設されます。
集落の水源になっているこの沢の上流部に調整池が建設され、そしてその排水はこの沢に放たれます。
千年万年にわたってこの地の豊かな暮らしを支えてきた要の地形を根こそぎ削ぎ取って、未来にわたって不毛の地にしてしまう、このとんでもない計画が見直されることを願い、こうした現実を多くの人に知っていただきたいと願います。
同時に、仮に計画が始まってしまったその後も、こうした、周辺河川の環境変化を観測し、そしてそれをきちんと伝えていき、全国の、そんな思いで今回、周辺環境調査地点の視察に入ったのです。
時折強く降り注ぐ雨の中、この杜の母のような大木たちの霊気に打たれながら歩きます。
小さな尾根や露岩の上に、モミの巨木が点々と見られ、その周辺は林床に至るまで、ひと際豊かな森の様相を呈します。杜の主木として巨木となったモミの木が、マザーツリーとなって森を育んでいるのでしょう。
それにしても、房総半島の極相林(その土地の風土環境が到達する森の最終形態)において、林冠の最高木として、細かな起伏の高みにはかつてはモミの木がこうして点在していましたが、今、そんな豊かな森はもう、房総ではこの山域から続く三浦層群一帯のほかにはないことでしょう。
高木、中木、低木、そして林床の幼木、下草、土の中の菌類微生物たち、その豊かな営みがこれまでそれこそ数千年以上もの暮らしの環境を支え続けてきたのです。
世界有数の人口密度を支え続けてきた、限りなく豊かだった日本の国土、その75%は山地であって、人間の大半は今、平野部に暮らし、そして社会インフラの多くもまた、平野に集中します。
その平野の暮らしの安全と豊かさ、生産力も資源も、いのちの水も、空気も、そして快適で暮らしやすい微気候をも、永遠に生み出し続けてきたのが、一見経済価値がないように見られてしまう、この山地における豊かないのちの営みにあるのです。
かつてはこの山の営みを守るため、要の樹木をご神木とし、環境の要を鎮守の杜として守り、そして水の湧き出しに龍神を祀り、そうして先人の懸命な努力によって、世界有数の人口密度を抱えながらもなお、この国は豊かな環境を今に繋いできたのでした。
尾根筋に達すると、とても心地よい風が吹き上げて涼しく、大木が点在する森はまた、この土地の長年の営みを物語ってくれるようです。
さっきまで地下足袋にたくさん吸い付いてきたヒルも、心地よい尾根の環境には全くいなくなります。
不快な環境を招いてしまったのは基本的に人間に寄る環境の錯乱による部分があまりに大きく、ヒルも、荒れてしまった環境の叫びのように湧き出してくるもののように思えます。全てを壊してしまう人間を寄せ付けないための、大地の反応として、現れ、そして良い環境を保つ、例えばふかふかの苔むしたマザーツリーの根元や安定した尾根筋頂部などには、ヒルは全くいなくなります。
そう思うと、人の営みと言うもの、そして自然の意志、そんなことをもっときちんと感じて、その法則の中に生きるすべを次世代に向けて知恵を絞って見出していかねばならないように思います。
今歩いているこの尾根も、最大で標高40mにわたって削り取って平坦化し、そしてその土で深い谷を埋め、そして跡形もなく地形を変えたその上に、50万枚もの巨大なソーラーパネルが並ぶ、そんな計画が今にも動き出そうとしているのです。
そして、奥に見渡す尾根筋もすべて削り取って平らにし、地域の水源となってこれまで集落の暮らしを支えてきた尾根の手前の深い谷も、高さ80mもの高さで埋め尽くされようとしているのです。
大切な山林の開発はこれまでも様々ありましたが、メガソーラーはそれらとは全く違う規模で、しかも壊して話いけない山地頂部もかまわずに行われるという点で、これまでの開発とはそのインパクトは比較にならず、それによって生じるであろう国土環境の劣化がどれほどの規模で広がってゆくか、想像もできないことでしょう。
いや、もうすでに全国で様々な問題が早速起こり始めておりますが、まだそれは、ほんの始まりに過ぎません。
それほどまでに、この開発はこれまでにない、未曽有の破壊につながる危険をはらんでおります。
大規模造成事業の経済効果の高さも大きな後押しとなって、国策で強力に進められるメガソーラー事業、電力の需給に関係なく発電すれば、固定価格で必ず売却でき、そして大きな利益が見込めるメガソーラー造成の圧力は凄まじい勢いで、このまま放置すれば数年で国土はまるで別のものになり果ててしまう、そんな危険すら感じております。
今、こ
の現実を多くの人に知っていただき、身近な問題として放置できないことを多くの人と共有していかねばならないと感じます。
西日本豪雨に広域被害もあり、今国土防災の在り方も問い直されております。
そんな中、メガソーラー造成含む太陽光発電設備造成のもたらす現実に、多くに人が気づき始め、全国各地で、計画地地元による反対運動が日増しに勢いを増してきました。
反対賛成の二項対立ではなく、ただ単に、土地を生産力を未来永劫に修復不可能なまでに奪ってしまう今のメガソーラーは絶対にまずいということ、一時の繁栄のためにいのちの営みの根幹をここまで奪ってはいけない、そのことを基軸に、未来の暮らし方、文明の在り方へと力を合わせて方向を共有できればと願います。
本質は、自然環境の健全化なくして、本当の安全も安心も、決して得られないということ。そのことを、声を大きくして伝え続けたいと思います。
共感の輪を広げていき、少しでも早く、メガソーラー増設の波を収めていきたい、そう思います。
今、全国で急速に広がるメガソーラーの問題を訴える各地地元の声を、大きな輪として伝えてゆくべく、来たる10月8日に急きょ、全国メガソーラー問題シンポジウムを開催することになりましたので、取り急ぎ、下記にご案内いたします。
~全国メガソーラー問題シンポジウムのご案内~
日時;2018年10月8日(体育の日)
場所; 長野県茅野市(中央本線特急停車駅)
第一部;茅野市市民館コンサートホール(定員300名)
第二部;茅野ユイワーク 情報交換会・質問・お話し会
参加費;無料
主催;全国メガソーラー問題シンポジウム準備委員会(事務局;小林峰一)
タイムスケジュール;
12;30 開場、受付開始
13;00 開演挨拶及びお話し
「そもそもソーラーがなぜここまで増えたのか」(仮称)
佐久裕二氏(10分)
13;10 基調講演① 「メガソーラーが環境を壊す10の理由」40分間
高田宏臣(環境活動家、造園家)
13;50 基調講演② 「メガソーラーを止める10の方法」30分間
梶山正三氏(弁護士)
14;20 休憩(10分)
14;30 各地メガソーラー計画地における住民活動事例報告と現地からのご意見
*4か所ほど、各20分程度、報告していただき、様々な地域の問題と取り組みを学びます。
15;50 総括、まとめ(各報告者のコメント)
16;00 第一部終了 第二部会場(茅野ゆいわーくに移動)
16;30 第二部 情報交換、意見交換、お話し交流会
*お茶お菓子は用意いたします。アルコールの持ち込みはできません。
お話ししたいことがある方、各地の報告、活動紹介、質問もざっくばらんに承りながら、この場で交流を兼ねて、それぞれが次への展望へとつながるような、有意義な交流会になればと思います。
18;00 第二部終了 解散
18;30 懇親会(会場未定。事前申し込み制となります)
シンポジウム参加は事前申し込みは必要ございませんが、懇親会は事前申し込み制となります。詳しい案内は追って公開いたします。
*なお、今回の開催地となる茅野市は、霧ヶ峰山麓に計画中の諏訪市四賀ソーラー事業地の下流域にあたります。
地元の住民団体「米沢地区Looop対策協議会」の方々の全面的なご協力、ご賛同の上、シンポジウムが開催されます。
この後、第2回シンポジウムは今のところ、千葉県鴨川市「鴨川の山と川と海を守る会」の方々が名乗りを上げてくださっております。
これをスタートに、この問題の本質を知っていただき、考えていただき、その関心の高まりのきっかけになればと思います。
また、こうした集いが各地域で活動される地元の方々の励みや力になる、そして、この問題に対する風向きを変えて、良い方向に向かう原動力になればと思います。
多くのご参加、多くの方の関心が、この問題を鎮めてゆく力になります。どうか、一人でも多くのご参加を、心からお願い申し上げます。