埼玉県北本市、住まいの外空間竣工 平成30年10月4日
台風一過、夏前から断続的に取り掛かり続けてました埼玉県北本市Tさんの住まいの外空間が本日竣工しました。
周辺を畑に囲まれた旗竿地、家屋に至る車道は、降り注いだ雨水がすべて浸透して大地の循環に還ってゆく、そんな下地作りを完璧におこなっておりますゆえに、あれだけの台風直後でも表層ウッドチップの飛散はなく、豪雨でも削れることなく、ぬかるむこともありません。
土が呼吸する、昼夜、地上と地中を上下に空気が行き来する事で地表の有機物が絡み合い、静かでしっとりした微環境を作ります。そこに土中の菌糸が絡み、車道においても多孔質で安定した土中の環境を醸成してくれるのです。
車道を抜けて、フロントスペースは駐車展開スペース件広場となります。ウッドチップはいずれ、うっすらと芝生や野草が多い、心地よい野となっていきます。
右のポストスタンドの奥、駐輪小屋の脇を抜けて玄関に至ります。
玄関わきの駐輪小屋は、ちょうど浄化槽の上のデッドスペースを利用して、簡素でざっくりとした質感で作っております。
駐輪小屋の屋根は、灌水せずに天水だけで草が維持される、草屋根仕上げです。
施工直後の表土の保護のため、ウッドチップを敷いておりますが、これもまた、台風後も飛散せず、保たれます。
屋根の上のような環境でも、微生物菌糸の作用を活かすことで、潤いのある快適環境が作れるのです。
駐輪小屋のほかに道具小屋と二つの薪棚を設けてます。小屋も薪棚も、こうした建物造作において最も大切なのことは、木々越しに佇まい良く収めてゆくこと、配置やスケールがとても大切になるのです。
フロント広場スペースと小屋の佇まい。手前の玄関アプローチは様々な古材を組み合わせて、施工直後からこの場所に溶け込むように心がけてます。
玄関からの見返りの景
中庭側からの道具小屋と薪棚の佇まい。
小屋端建具を含めて古民家解体の際に得た古材をふんだんに用いて作ってます。
薪棚は極シンプルに。
中庭とベンチの佇まい。
南庭。あと2年もすれば、全体が夏の間の木漏れ日の下の涼やかなデッキの空間になっていくことでしょう。
西側のプライベートスペースは家屋窓からの景や西日除けとしてだけでなく、回遊して草木を楽しむスペースです。
写真の手前には1坪菜園を配してます。
植栽は群落単位にマウンドを盛り、通気孔を掘り、大地の呼吸を整えながら仕上げていきます。
表層には腐植の進んだ落ち葉枯れ枝ウッドチップ炭燻炭を配合し、森の表土の状態を醸成していきます。
スポンジのような土壌環境が保たれることで、この腐植もまた絡み合い、菌糸によって捕捉されて、施工直後の台風直撃の後も飛散することなく落ち着いた表情を見せています。
こうした、生きた環境を丁寧に作り続けることで、わずかな点でも大地の呼吸を繋ぐことができる喜びと、今の住環境の問題、自然の法則をますます知る機会感じる機会を失った社会や人、そうした現代の大きな問題に気づかされ、自分のすべきこと、伝えるべきことに改めて気づかされるのです。
いのち息づく空間がこうして一つ、生まれました。ここでの暮らしを心豊かに育みつつ、土地を育ててゆく、そんな暮らし方を思い出すことが今、改めて必要に思います。
お施主のTさん、長らくお待たせしました上に、思うままに環境再生の場を与えてくださり、どうもありがとうございました。