庭・街・風景に思う

新年初工事 埼玉県八潮市 低地の植栽 平成31年1月17日

 
 皆様明けましておめでとうございます。私たち含む、世界中の人たち子供たちにとって、今年が平和で、たくさんの希望を感じる年となりますように・・。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、昨年から断続的にかかってきました埼玉県八潮市の庭、植栽と土中環境改善を進めております。

 八潮駅近くの新興住宅地は、水のはけにくい低地に最近造成されました。
 造成によって土の中の環境もさらに悪化して、掘ればいたるところに停滞水がじわじわと浸み出します。
 今は、これまで人の住まなかったような立地だろうが、構わずどこにでも大規模に造成されて売られる時代ですので、こうした、環境的に問題のある土地は当たり前になってしまいました。
 しかし、こうした場所でも、庭の植栽の仕方によって、土地を育ててゆくこと、回復させてゆくことも十分に可能です。

 今回、少し、植樹を追って紹介します。

 まず、環境つくりのための植栽は、一本単位で植えず、自然群落の組み合わせを参考に、高木、中木、低木を、必ず組み合わせで植えていきます。根鉢と根鉢をくっつけ合うように植えることで、土中菌も多様化し、そしてそれを木々の根もお互い利用し合うのです。
 自然界では菌糸のネットワークの中で草木が情報交換といのちの補完を行っているのと同様のことを、庭の環境に作ってゆくのです。

 先の植栽マウンド、植栽完了後。景観だけでなく、こうした植栽群を適切に点在させてゆくことで、土地改善の起点を作ってゆくイメージです。

 こちらは同じ庭の中庭側で、昨年秋の植栽終了して今の様子です。その数か月全く水を与えずとも、木々は生き生きいています。

 確認のために、1本を掘り取り、根と菌糸の様子を観察します。
 秋植え後の冬だというのに、わずか数か月ですでに、根と共生する白い菌糸はびっしりと張り巡り、そして新たに細かい根がたくさん出ています。そしてその根の先の方にも、白い菌糸が多い、根と養分や水分の交換を行っている様子が分かります。

 こういう状態になれば、木は水を与えずにもたくましく生きていきます。菌糸が乗ってこないと、いつまでも生長不良が続きます。菌糸が乗ることではじめて、新たに植えた木が土地のいのちの仲間入りを果たしたと言えるのです。

 菌糸が健全に土中を覆い、木々の根と共存してゆく、土中環境の再生が、荒廃地でも健康な庭を作るために、最も大切なことになります。

そのために、土中環境つくりは十分かつ、臨機応変に行う必要があります。

 植栽する場所の下地に炭と燻炭を混ぜて攪拌したうえ、縦穴を数か所開けていきます。

 その縦穴の中に古瓦片と炭を入れて、通気透水層を、根鉢の下に作っていきます。

 そして、木々のバランスを見ながら、改良した植栽下地地盤の上に置いていきます。
 一か所にこれほどの木々を、しかも根鉢をくっつけるほどに密集して植えます。

 植えるというと、穴を掘って根鉢を入れて埋め戻す、そんな風に考える人が多いと思いますが、こうした外周道路との高低差に乏しい今の大規模住宅地、しかも、ここは本来低湿地、こうした庭で穴を掘って木を植えると、多くは酸欠や根腐れの症状を呈してしまいます。
 穴を掘るなら、植える場所の隣を掘って、その掘った土で盛って植栽する、これは実は、それこそ昔からの日本の環境林造成の手法であります。

正面が、今の場所の植栽埋め戻し後です。これで終わりでなく、まだまだやることあるのですが、その手順はまたいずれ紹介します。
 
 玄関アプローチの石畳も、自然に植えられた木々の合間でようやく落ち着きを感じさせてくれます。

 こんな感じで、植栽群落を一つずつ丁寧に、土中環境から作ってゆくことで、高低差のない低湿地の住まいの庭も、健康な森となっていきます。

 環境が健康であれば、小鳥も楽しそうに囀ります。人もやさしくなれます。
 そして、ひんやりと、深呼吸したくなるような発酵した土の香りが感じられる、そんな環境となって住まいを包んでいきます。

 広いのでまだまだかかりますが、また報告いたします。

それでは皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 


株式会社高田造園設計事務所様

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