呼吸するコンクリート駐車場をつくる。 平成30年8月11日
皆様お久しぶりです。高田造園設計事務所の高田です。今年は公私に多忙を極め、数か月ぶりのブログ更新となりました。
気づいたらもう何か月もまともな休みの日はとれておらず、ようやく明日からお盆休みに入ります。21日まで10日間のお休みをいただきます。
私自身はお盆中もすべきことが山ほどあり、ほぼ毎日活動しておりますが、3日間程度は子供と山登りに行く予定でおります。溜まりに溜まった心の塵をきれいに落とし、また怒涛の後半期、天地人、現代未来に対し、意義のある仕事に努めたいと思います。
これでようやく今年の前半期終了となります。
高田造園、そして私たちの環境活動に関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。
また、工事や手入れを長らくお待ちくださっている方々、大変恐縮でございます。
お盆明けにまたご連絡いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、本日、千葉県佐倉市で施工中の旧家敷地内車道および駐車場工事が植栽を残してほぼ終了しましたので、過程を報告させていただきます。
8年前に竣工した旧家Aさんの庭、家屋建て替えに伴って痛んだ環境の再生および駐車場、車道工事が大方終了しました。
車道部分はコンクリートの洗い出し、そして玄関前の3台分の駐車スペースは、コンクリート盤および洗い出しと、コンクリート工事です。
「高田造園がコンクリート使うの?」と思われる方が多いでしょうが、高田造園のコンクリート施工は、コンクリートの下で、しっかりと樹木根も微生物活動も健全におこなわれて、しっとりとした大地の呼吸も根の動きも妨げない、徹底して、そんな配慮と工法を考え、施工します。
従って、真夏の日中、日差しを浴びたコンクリート表面も、生きている下地土壌からの冷気できちんと冷却されます。また、下地の土を全く痛めないため、コンクリートと言えども微妙なクッションが働き、足も疲れない。
その上、下地にしっかりと根が張り巡らせてゆくため、地盤は本当の意味で安定し、よい環境が持続します。
今、街も里も奥山も、これまでに我々が経験したことのないほどの環境の荒廃を目の当たりにしておりますが、その原因の多くは、自然環境の法則を無視した力任せの現代土木造作がきっかけとなる例があまりにも多い中、こうしたコンクリートを用いた車道造りにおいても、きちんと大地をケアして土中の通気浸透環境を全く痛めずにむしろよりよく改善し、土地の環境と一体化させてゆく方法があることも伝えていかねばなりません。
今回、そんな施工の一例を少しご紹介いたします。
駐車場に敷き詰めるコンクリート盤は一枚の重量約500㎏、長さ4m、これを組み合わせて敷きつめていきます。
ただ単に敷くわけではなく、コンクリート盤や車の重量が大地を圧迫して土中の生物活動を妨げず、さらには下地土壌の通気性、浸透性を損なわないような下地造りをしていきます。
写真は、平板を敷く下地に焼いた杭を打ち込みます。1枚に対して3か所杭を打ち、これに菌糸や根を絡ませて、平板の重量を支える構造をとります。
材料となるコンクリート盤及び、焼き杭。杭は表面がうろこ模様になるまで十分に炭化させます。
つまり、炭の棒が土中でコンクリートの重量を支えるのです。
今回、車道と駐車場面積合わせて約160平方メートルに対し、200本近くの杭を打ち込んでいます。
ちなみに、今回用いたこの巨大なコンクリート盤も、実は再生利用です。
さらに、コンクリート盤の下に土中菌糸や樹木根を誘導する、通気浸透孔を開けていきます。
この駐車場でやはり、200か所程度の通気浸透孔を設けました。
その穴には、炭と剪定枝を絡ませて、その分解に伴って増殖する菌類微生物の活動によって、さらに、建築工事に伴う締固めで傷んでしまった土地の改善を促していきます。
上にかぶせて行くコンクリート盤は、この通気浸透孔をブリッジ状の構造で守るのです。
そして、コンクリート盤をそっと置いていきます。
コンクリート盤の目地部分に、砕いたコンクリート片をコツコツと突き込んでゆくことで、全体を一体化して重量を受け、車の重量負荷を分散させます。
そのための大切な材料となるコンクリート片は、以前に他の現場で解体したU字溝やコンクリートブロックなどを砕いて用います。
環境の再生はすべて、有機物と無機物の循環です。自然界の循環がそうであるように、何も捨てずに組み替えて利用してゆく、それが良い環境を作ってゆくために最も大切な考え方かもしれません。
スクラップ&ビルドの時代を早く脱却して、健康な大地を軸にしたすべての循環、そんな時代の到来を夢見ます。
そしてさらに、駐車場のアクセントおよび車道部分はコンクリート舗装になりますが、その型枠設置後です。
この下地造りが大地環境の健全化のために重要な作業となります。我々はそんな見えない部分に時間と労力を注ぐことで、どんな場所でも人によっても木々にとっても、そして訪れる虫や鳥たちにとっても心地よい環境へと育ててゆくのです。
そしてまた、下地に焼き杭を打ち込んでいきます。
杭は下地地面より6センチほど高くし、この高さで鉄筋メッシュを載せていきます。
そしてまた、下地に数か所ほど通気浸透孔を設けて竹炭、枝粗朶を挿入します。
そしてまた、下地への荷重を点状に支えて大地を圧迫しないように、解体廃材をこぶし大に砕いてそれを下地材に用います。
コンクリート下地、ワイヤーメッシュ敷設後。
焼き杭によってコンクリートを支える構造で、下地には砕いたコンクリート片、レンガ廃材、ウッドチップ、炭、そして細い竹も入れています。空間を保つのに、有機物と無機物を組み合わせすのです。
竹は、昔、鉄筋の代わりに竹を用いていた時期や地域や国があったようですが、昔の小舞下地壁がそうであるように弾力があり、環境上も機能的にも、いずれ劣化してゆく鉄筋に比しても非常に有効だと実感し、下地に積極的に用いております。
通気を妨げず、自然界において石がかぶさったような状況を作ってゆくことで、心地よく呼吸する駐車場になっていきます。
車道も同様に、すべての水がきちんと大地に吸い込まれて微生物によって浄化されていのちのエネルギーへと帰してゆくよう、丁寧に下地を造作していきます。
見えない部分ですが、心地よく育ってゆく環境つくりのためにここが最も大切な部分なのです。
そして一区画ずつ、コンクリート打設します。
車道部分のコンクリート敷き均し後。
そして、コンクリートが硬化する前に表面を洗い出して小石をごつごつと浮き出させます。
これも、傾斜のある車道で降った雨が加速度を付けて流れることなく、目地から浸み込んでゆくための配慮と同時に、滑りにくいようにといった具合の人の使い勝手への配慮、さらには見た目の落ち着きをも、両立させてゆくのです。
見た目は何の変哲もないコンクリート車道ですが、ここに降った雨は全て浸透して土地を潤していき、そして呼吸して心地よい環境を保ってくれる、そんな駐車場になりました。
建築工事中はちょっとした雨でも泥水が流亡していたのですが、こうして車道完成後、先日の台風でも大雨でも、まったく泥水の流亡はありません。
また、こうして土壌の通気浸透性が高まれば、周辺土壌もまた、さらに膨軟に良い状態へと変わっていきます。こうして土地は自然の働きによって再生されるものであり、私たちの造作は自然環境が自ら再生しやすいように、きっかけを作るにすぎません。逆に言えば、それだけでよいのです。すべてを人がやろうとしても、自然の働きには全く及ばないのですから。
そして、建築工事に伴っていたんだ木々も、精気を取り戻してきたように感じています。
見えない土中の環境つくりの作業を理解してくださり、徹底的に改善させてくださいましたお施主のAさん、どうもありがとうございました。
人の造作が環境をよい方向に変えてゆく、それが本当の人のあり方であってそこにしか、持続可能な未来はありません。
私の仕事はますます、こうした住環境ばかりでなく、里山奥山を含めた環境全体の再生の依頼が非常に増えてきました。
街だろうが山だろうが、どこにおいても、息づく大地を保つこと、環境を豊かに健康に保つということはそれに尽きると言っても過言はないでしょう。
私たちは大地の上で自然の法則の中、すべての循環の中でしか生きられない、それが厳然たる真理、そのために、そしてそのことを伝えるために、今年後半も全力で生きていきたいと思います。
お盆明けもどうぞよろしくお願いいたします。皆様ありがとうございました。