埼玉県飯能市の庭、竣工 2018年4月13日
新緑まぶしいこの時期、あらゆる命にとって一年の中でも最も希望に満ち溢れる時期ではないでしょうか。
この時期を新学期、新年度のスタートとしてきた日本人の感性に、心地よい親しみを感じます。
さて、この一週間、泊まり込みでの集中施工で庭が完成し、また一つ、これから育まれる風景が生まれました。
入間川の畔、背面の崖線の木々が借景となって繋がってゆく、そんな風景を意識しました。
この庭の正面に、地元の憩いの場であると同時に週末にはたくさんの観光客でにぎわう飯能河原のゆったりした景が広がります。
庭の背景として絶好のロケーションであると同時に、この庭が飯能河原の一角の風景として、訪れる人たちにとっても、さりげなく、飯能河原の心地よい印象を深めてもらえる、そんな庭を心がけました。
家屋側、玄関付近からの景。飯能河原周辺の森とつながってゆく、そんな植栽と空間配置です。
この住まいのデッキからの眺めを構成する、その中で改めて、風景はせせこましい人間の所有を超えてつながっているという、ごく当たり前のことに気づかされます。
風景ではなく、環境のつながりというのが本来なのでしょう。
庭を想うことで、生きとし生けるすべてのいのちのつながりに想いを抱く、そんなきっかけになる庭つくりができれば、そんな気持ちになります。
こじんまりとした平屋、この場所にはこのスケールがたまらぬほどにしっくりと収まります。
これが二階家屋であれば、背面段丘崖の木々とのつながりがぷっつりと途絶えてしまうのです。
庭の木々越しの家屋風景。植えたばかりの木々も、植えられた直後からその土地の風景に何の違和感もなく溶け込む、そんな植栽の在り方が、数十年の風景を育むものと信じます。
道路から見た庭の全景。
単純で一見何もない、シンプル極まりない空間ですが、周辺の景に違和感なく収まり、そしてこの地の風情をさらに高めてゆく、それが私立ちの目指す庭の極意かもしれません。
庭の木々と背面段丘の木々。
シンプルでいい。その土地の風景として、人間だけでなく、あらゆる命にとって心地よく愛される庭、そんな空間を作っていければ、造園という仕事は本当に今の時代にかけがえのない価値を発揮することでしょう。
お施主のIさん、施工まで長らくお待ちいただきありがとうございました。
また、今もなお、お待ちくださっているお客様、一つ一つ心込めて作ってまいりますので、今後ともどうかよろしくお願いいたします。