取手の庭の竣工と、ダーチャ畑の植え付け 平成30年3月16日
時の流れは待ったなしの速さで、つい最近、寒が明けて旧正月を迎えたかと思ったら、もうすでに春分を迎える頃となりました。
高田造園も西に東に奔走する中、最近の日常を少し紹介したいと思います。
まずは数日前に竣工した、茨城県取手市の屋外環境を少しばかり紹介します。
ここは数年前の河川氾濫の記憶新しい小貝川流域、県のハザードマップ浸水想定地域に接する土地です。
建築工事に伴う盛土、造成によって土地の通気浸透環境はますます荒廃し、土壌環境は悪化し、敷地にはあちこち水たまりができては長く解消せず、またもともとあった木々も枯れたり弱ったり、そんな状況の改善からスタートしました。
完成後の今、庭も駐車場も雨水はすべて円滑に浸透して土中を潤す、そんないのちの循環が再生されました。
これが駐車場と主庭、施工前の状態です。
施工後。
駐車場から主庭に、菜園側には木々の間を抜けて伝います。
主庭、菜園脇の木々の合間のベンチ
雑木林に面した中庭側は、雨落ちの浸透処理と窓際の近景植栽といった、ごく控えめな造作にとどめて、心地よい多目的スペースとして残します。
主庭の施工前。
主庭施工後、南庭デッキ前。
ここでは、玄関前以外はすべて雨どいを設けることなく、屋根の水は雨落ちの溝に浸透し、土中の菌類微生物活動によって大地のエネルギーに還元されて潤してゆく、そしてこの土地の土壌環境は日に日に豊かに育ってゆきます。
表土の通気浸透改善施工中。
雨落ち部分だけでなく、樹木植栽マウンドを中心に、ネットワーク状に横溝浸透ラインを掘っていきます。
ここは炭と枝葉を絡ませて、発生する菌糸の働きによって植栽樹木の根系もまたネットワークのように広く深く張り巡らせて、表土の状態を豊かに快適に育ててゆくのです。
道路に面した東側は、家際の植栽と外周植栽、そしてその間の園路を連続させていきます。
あとひと月もすれば木々は芽吹き、清らかな新緑の光に家屋は包み込まれることでしょう。
生まれたての庭、これから月日とともに、環境、人、共に豊かに育ってゆく、竣工したての住まいの環境に、そんな想いを込めます。
さて、3月となると、ダーチャフィールド自給菜園の植え付け作業も始まります。
ひと工事を終えてほっと一息つく一時に、こうした楽しい作業を進めます。
この日はジャガイモの種芋のほか、春大根に小松菜を植えます。
植え付け後、複合発酵バイオ資材ともみ殻燻炭を、表層に重ねてまぶしていきます。
その上に、稲わらによって表層を保護していきます。適度な蒸発調整と、菌類微生物による表土の改善効果の高さゆえに、稲わらはマルチ素材として他に代えることのできない価値があります。
稲わらマルチ後、麻ひもを張ってわらの飛散を止めていきます。
黒いラインは灌水チューブです。このチューブで、当社で培養している複合発酵酵素水をじわじわと大地に浸み込ませていきます。
浸み込んで大地のエネルギーと化してゆく水の動きを見ていると、それだけでうれしく豊かな心持になります。
今回、わずか30坪足らずの畑植え付けに、5人で半日かけて丁寧に行います。収穫を経済ベースで販売すれば当然、この日の日当すら出ません。
そこが、これからの農への向かい方を問い直す機会となるように感じます。
このダーチャフィールドの菜園面積は合計約50坪、収穫を市場価格のお金に換算すれば、それこそ採算など全く及ばないものですが、自給的な暮らしのために、この畑を循環させてうまく使えば、たったこれだけで一家庭でつつましやかに消費する野菜根菜のほとんどが自給できる、セーフティーネットになるのです。
かつての暮らしにおいて、世界中の人が、そんな豊かな餌場を大地に保ち育ててきた、そんな営みの積み重ねの上に今があります。
その大地の豊かさを、一時の経済の犠牲にせずに後世に伝えてゆく、その鍵は、こうした半自給的な楽しみと、そこで育まれる確かな感覚の中にこそ、あるような気がしてなりません。