千葉県佐倉市の庭 濡れ縁つくり 平成23年7月30日
千葉県佐倉市、古材を再生利用した入母屋民家造りの庭、昨日は濡れ縁が完成しました。
この入母屋民家にふさわしく、重厚に仕上がった濡れ縁の材料も全て、古民家の古材を再生して作りました。
床材は、マツの垂木(たるき)の古材を用い、手前の幕板(まくいた)は入母屋古民家の杉の破風板(はふいた)をカットして用いています。
根太(ねた)材には幅1尺の古民家広縁の敷居の桁(けた)を利用しています。古材でなければ贅沢過ぎて、今どきなかなかここまではできません。
また、古材の再利用だからこそ、今の時代に希少な良材をふんだんに用いて仕上げた濡れ縁も、自然で違和感もなく、ここに収まってゆくのでしょう。
完成した濡れ縁と再生民家の収まりの様子。素材の選択は全てバランスから考えてゆくことが基本だということが分かると思います。
かつての日本の民家は、外と中とのつながりの部分に繊細な神経を注がれてきました。
部屋があって、その外側に広縁があり、そして外と中との中間領域である濡れ縁を挟んで外の空間へとつながります。
外と中との中間領域の存在が、室内に居ながらも外の雰囲気を心地よく伝え、なおかつ緩和してくれるため、かつての日本ではカーテンなど必要のない暮らしが実現されていたのです。
今は失われつつある、かつての日本のつつましやかで豊かな暮らし。この民家再生に携わる中で、昔の日本人の知恵を再確認し、感動することばかりです。
下見板と書院窓の外観。今どきの工業製品住宅とは違って、家屋はそれだけで美しく、潤いと温かさを感じます。
ハウスメーカー住宅に代表される今の日本の住宅の外観はあまりにも、潤いも温かみも人間らしさも感じられません。それゆえ私は、そんな家屋の外観に潤いや温かみが感じられるよう、外観を重視して樹木を配置するのですが、昔の素晴らしい日本民家は、建物単体でさえ、潤いも温かみも十分に備わっているのです。
工業化と合理化との名のもとに、失った豊かさ、今回の仕事は入母屋民家を再生するだけでなく、失われつつあった大切な日本の心をも再生するきっかけになるように感じます。