過去のブログ 『雑木の庭』

千葉県鴨川市 T氏邸にて   平成23年7月31日

 つい先月に完成したばかりの千葉県鴨川市、Tさんの庭にバーベキューに招かれて、昨日、当社の社員家族共々、大挙して訪ねました。


 時折雨がパラつくあいにくの天気でしたが、1カ月を経た庭は順調に落ち着いてきました。

 巨木の森に囲まれた抜群のロケーションと、この場にふさわしい伸びやかで洗練された家屋、そしてオーナーのTさんご夫妻、これほど恵まれた条件で造園できることはなかなかありません。
 新たに積んだ石垣の小道が森へと伝う一本の道を、何気なく、しかし見ごたえのある風景へと昇華させているようです。

 Tさんの家屋では、全ての窓が外の風景を切り取って室内に伝えるべく、計算されつくて配されているようです。
 この窓越しの景を更に引き立てるよう、近景をつくるのが私たち造園の仕事です。素晴らしい風景を更に引き立て、引き込むようなあり方が、理想的な近景植栽の在り方です。
 一般的な都会の住宅地では、なかなか周囲の風景を借りることは難しいのですが、ここでは存分に周囲の素晴らしい風景を利用しつくすことができました。
 これは1階リビングのソファースペース脇、西側窓の景です。

 2階窓からの景。ここからは南斜面まばらなエノキ林と棚田跡地の野原の景が角度的にとても身近に感じられます。
 左側大きな窓が景色観賞を目的としたフィックスウインドウ、そしてその右脇の小窓が風をとり込むための開閉窓です。
 景色観賞用の窓と通気のための窓を別々に配したのはTさん奥様の発案でした。
 これほどの大きさの窓を開閉できるようにする場合、どうしても窓の真ん中に窓枠の縦線が入ってしまいます。それではこの素晴らしい景がもったいないと考えられた奥様が、観賞用の窓をフィックスとして、その脇に小窓の通気窓を設けたのです。
 この住まいの全ての窓は、こうして2種の用途の窓にて構成されています。

 玄関の扉越しの景色。部屋から玄関に向かうと、左側の縦長の鏡に外の景色がまるで小窓のように映り込んでいます。
 こうした配置一つ一つにも、Tさん夫妻のセンスとこの土地の自然に対する深い想いが感じられます。

 敷地内を散歩します。どこまでがTさんの敷地でどこからがよその敷地か、分かりません。Tさんもそんなことはあまり気にしていないようです。
 敷地上部の森の中に水源を見つけて、つい最近Tさんはそこから長大なパイプを林内に通して、その水を敷地内に引き込みました。
 この水を使ってこの土地の水辺の自然の再現となるビオトープつくりを計画しています。Tさんのこうした好奇心と行動力には脱帽です。

 日が沈むと、家も外空間もまた独特の雰囲気に包まれます。家屋を見上げ、美しい家だなあと感じつつ、この家屋の美しさを引き立てているのが、写真右隣のエノキの大木であることに気付きます。

森の中の夜の風は心地よく、子供たちのはしゃぎ声も大人の声もいつまでも尽きることがありません。

 お開きの時間はすでに真っ暗になりました。森の中の暗闇と家屋から漏れる明かりが木々の枝葉をかすかに照らし、とてもみずみずしく美しい光景が見られます。素晴らしいロケーションと素晴らしい住まい、住環境は住む家族の人柄と感性が間違いなく反映するようです。

 RCのシンプルな門柱。コンクリートの一枚板なのにとても温かい夕暮れ時の門柱の表情が、この地に住まうTさんご家族を表しているようです。
 夕暮れ時の闇の中に柔らかく光る門柱の佇まい、夜の庭に、私たちの知らなかったこの土地の別の表情を知りました。
 どこか懐かしく、とても温かく、何かを思い出させてくれそうな、何かを悟らせてくれそうな、そんな思いで夜の門柱を見つめます。
 住まいの環境は、夜も昼も全ての時間がそこに住まれる方と共にあります。

 今回のバーベキューは、Tさんご夫妻のご厚意により、「庭の工事にかかわって下さった皆様家族でいらしてください。」とのお招きにより、社員家族や仕事仲間皆でうかがいました。ついついご厚意に甘えて、子供含めて20人での参加となりました。
 すべてTさんご家族の方々がこの日の宴席をご準備下さったのです。感動で、恐縮で、感謝の言葉もありません。こうした体験は一生の宝となって、庭師としての私たちの心の奥深くまで刻み込まれるようです。
 素晴らしいお客様のご厚意に接するたびに、私たちの庭つくりへのモチベーションがますます高められるように感じます。
 こうした方々の温かなお心遣いが私たちを庭師としてより大きく育ててくれることを感じ、心の底から合掌です。
 
 Tさまご家族の皆様、いろいろと本当にありがとうございました。

株式会社高田造園設計事務所様

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