神奈川県小田原市の庭つくり 平成22年9月5日
灼熱の残暑さめやらない中、小田原市Tさんの庭つくりが始まって1週間が過ぎました。
Tさんの住まいから西に富士山が見えます。山々に囲まれたこの地域では、周辺の山から脈々と流れ出る豊富な地下水があちこちで自噴しています。
夏の間は特に富士山の雪解け水で水量が増えるようです。
この地下水を利用して、水舟の造形を庭に取り込みました。
水舟とは、山からの湧水や自噴井戸の水を引き込み、流水を受ける槽をいくつか連ねて、日常の用途に使うための貯水槽のようなものを言います。
水の都、岐阜県郡上八幡市の水舟は有名ですが、実際には日本中の高山の周辺や中山間地など、豊富な湧水に恵まれた地域では、普通にみることができます。
ここ小田原市も、富士山に端を発する豊富な地下水を利用した水舟が残り、また、田んぼ沿いの水路にも清らかな水音が響いていました。こうしたものが地域の風景を作るのだと感じました。
今回、富士山のふもとのこの庭では、風土の象徴的な存在として、水舟を作らない手はありません。
竹の樋から地下水が流れ出し、大玉のスイカを十分冷やせる上段の水鉢から溢れた水は、さらに下段の水瓶の古材が受けます。
この水瓶は造園工事終了後、Tさん家で次々に増えてしまった金魚たちの棲家になる予定です。
ここも庭の完成後には、見通しや風通しの良い森の中の住まいになります。
Tさん夫妻は田んぼに囲まれたのどかな住環境を子育ての地と定めて家を建てられました。
水舟の造形を半年も考え続けた挙句、のどかな風景にふさわしく、庭の中におさまっていきそうです。
そして庭の真ん中にまた、変なものを作り始めました。これは何でしょう?
パンやピザなど、さまざまな食材を、熱せられた石の輻射熱で料理するための石窯の基礎部分の石積みになります。
石窯はすごいです。Tさんに「石窯を作ってください」と言われて、にわか勉強したのですが、世界中の人類はかつて、火を使って調理する際、直火を利用するだけでなく、火の熱を石などの蓄熱性の自然素材に吸収させて、そしてその輻射熱を利用しておいしい料理を作っていたのです。
ドーム型の大きな石窯をつくる予定です。
なお、ついでのお知らせになりますが、異常高温と乾燥が続く今年の夏、当社では植栽工事をすべて中断しております。
今後も温暖化による夏の乾燥高温が続く場合、植栽樹種も考え直さねばなりません。
植栽工事の再開はお彼岸前後を予定しておりますが、異常な夏を乗り越えて木々も疲れ切っておりますので、移植に耐えられる状態かどうかを見極めながら植栽時期を判断していきたいと思います。
お待ちいただいておりますお客様、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。