大発生中のアブラムシの対処について 平成23年5月2日
昨年の暮れから、植えたばかりの雑木を中心に、黒く大型のアブラムシが大発生しています。
これは、コナラやクリ、クヌギなどに発生しているクリオオアブラムシです。一見したところ、クロオオアリの集団のように見えます。
昨年から目立ってこの大型アブラムシが集団で大発生するようになりました。
昨年末と今年にかけて、この大型アブラムシの大発生に驚いたお客様方々からの問い合わせが相次ぎましたので、このブログでもアブラムシに対する正しい対処法などをお伝えしなければならないと感じました。
アブラムシは樹肌などから木の汁を吸いますので、あまり大量に発生するとその木の衰弱に拍車をかけることになります。また、その死骸や糞や分泌液などにカビなどが寄生し、それがすす病の原因にもなるという、庭にとっては厄介な存在です。
雑木の庭の中では、移植直後でまだ完全には根付いていない雑木や、何らかの理由で傷んだ雑木に集中して発生します。
元気な雑木や、生態系的に安定した庭の中では、その発生はほとんど確認されません。
よく観察すると、アブラムシが発生している樹木には、この写真のような、小さなイモムシみたいな生き物や、テントウムシが多数見られます。
この写真は、右はクリオオアブラムシ、左のイモムシみたいな生き物はテントウムシの幼虫です。
テントウムシはアブラムシが大好物で、その幼虫もアブラムシを好んで捕食します。
テントウムシの幼虫がアブラムシを捕食しているところです。
「がんばれテントウムシの幼虫」と、エールを送りたい気分です。
テントウムシはアブラムシだけでなく、カイガラムシやうどんこ病など、庭における厄介な病害虫を掃除してくれるのです。
農薬散布によってこの益虫を殺してしまうことにより、返ってアブラムシなどの害虫の大量発生を招いてしまうのです。
テントウムシもその幼虫も農薬に非常に弱く、散布によって簡単に死んでしまいます。
ところが、今のアブラムシは農薬に対する耐性を獲得してしまっていて、農薬散布による対処が困難というか、不可能になってきました。特に、クリオオアブラムシは普通の農薬でそのコロニーを絶滅させることはまず不可能と言ってよい程の耐性を獲得してしまいました。
アブラムシは孵化後一週間程度で成虫となり、その後は毎日のように数匹の幼虫を生みます。それがまた1週間で成虫となるわけですから、その繁殖サイクルは驚くほど速いのです。
そして、農薬散布によって天敵が絶滅した環境の下、生き残った大型アブラムシは大発生してしまうのです。
最近のアブラムシの大発生は、農薬の乱用による生態系の破壊が招いた結果といえます。
アブラムシの大発生を抑制するためにはまず、絶対に農薬を使用しない決意が大切です。どんなに強い農薬を散布しても、たった1匹でも生き残ってしまえば、その一匹が農薬耐性を獲得した子孫をあっという間に増やしてしまいます。
生態系の調和が整っていれば、アブラムシが増えるとそれを捕食するテントウムシなども増えて、大量発生が自然と抑制させるのですが、農薬の使用によってテントウムシのほうが先に死に絶えてしまうのです。
私は、アブラムシに対しては、まずは晴天の日の午前中に牛乳を散布して、アブラムシの気孔をふさいで窒息させるようにします。
牛乳散布によってアブラムシが死に絶えたのを確認したら、葉や幹についた牛乳を洗い流すために灌水します。
牛乳散布ができないときは、軍手をして、手で押しつぶします。
アブラムシの集団を押しつぶす際、気をつけねばならないのは、一緒にテントウムシの幼虫まで潰してしまうことのないように配慮します。
人にも土にも生態系にも有害な農薬に頼った管理からの脱却のためには、生態系の相互抑制作用を庭につくりあげてゆくことが大切です。