元旦の炭焼き 平成25年1月2日
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
今年が多くの人にとって良い年となりますように。
新たな1年、やりたいことは山ほどあります。仕事が始まればまた、ノンストップの時間との戦いが始まります。
わずかな正月休みばかりは時間に追われることなく、やりたいことがやれるのです。
元旦は、朝から小2の息子と二人きり、畑で竹炭を焼く準備にかかります。簡易組み立て式の炭化炉に竹を並べていきます。
正月中にできる限りたくさん竹炭を作ります。できた竹炭はその後、植栽の際の土壌改良に用います。樹木の土壌改良に竹炭は最高です。
昨年までは、土壌改良用の竹炭を購入して植栽の際に用いていたのですが、今年から自給体制に向けてチャレンジです。
本来なら、土壌改良用の竹炭など、野焼きで作る方法がもっとも簡単なのですが、ちょっと、正月早々、バンバン野焼きしていたら、付近の住民が心配するだろうとの配慮から、こうしてコンパクトな炭化炉でコツコツやることにしたのです。
竹炭の材料は、モウソウチクやマダケを乾燥させて用います。
無限に入手できるうえ、荒れた竹林の整備にもつながります。竹は昨年、当社の資材置き場脇の竹林から伐りだしました。
この竹を、炭化炉に入る長さにそろえてカットします。
長さのそろえた竹を割っていき、そしてその割竹を炭化炉にくべて蓋をするのです。
竹を詰めて蓋をしたところ。この組み立て式の炭化炉は軽量で、煙突内蔵の優れものです。
そして、息子が杉林から運んできたのは焚き付け用の杉の枯葉です。
着火には杉の枯葉が最高で、新聞紙で火を起こすのは邪道だと、うちの息子はそう思っているようです。
焚き口に杉葉を入れて着火し、そしてうちわで扇いで炭化炉の中に熱を送り込みます。
いい感じで白い湯気のような煙が出てきました。
内蔵式の煙突から勢いよく白い煙が出てきたら、炉の中で炭化が始まった証です。
ここから数時間、煙の様子を見ながら、他の作業にかかります。
炉の上は数百度に熱せられるので、お湯を沸かしたり、リンゴを焼いておやつにしたりします。
周囲の自社所有林の探検に行きます。
荒れたこの山を入手したのは昨年の夏、忙しさのあまり、昨年はほとんど山の整備ができませんでした。
今年こそは、この山に作業道を通して、活きた森へと整備にかかります。
この山を抜けて下まで降りると、小さな小川が流れています。この川が、自社の土地の境界です。
山の傾斜が蓄えた水がしみ出して、1年を通して水が涸れることはありません。数十年前まで、この付近は田んぼだったので、かつてこの小川は貴重な用水路として利用されてきたことでしょう。
山間の谷地のお米のおいしさは、ミネラル豊富な水や豊かな生態系の賜物なのでしょう。
しかし、こんな山奥の小さな谷津田は、近代の機械化の中で、生産性の名のもとに次々に放棄されていき、そしてその多くが荒れ果ててしまいました。
この、水路として使われなくなった小川も、落ち葉に埋もれて荒れた湿地に変貌しつつあります。これをこれからどう再生しようか、水辺のほとりで考えているといろんなアイデアが浮かんできます。
川辺から自社林を見上げます。コナラやヤマザクラなどの雑木林から、徐々にシラカシ主体の常緑樹林に移り変わりつつあります。
こうした光景に、日本の里山の縮図を感じます。かつては落ち葉掻きや薪炭材料として、コナラ主体の雑木林が維持されてきたことでしょう。
雑木林は南関東の場合、放置された後、おそらく50年程度で常緑広葉樹林に移り変わることでしょう。
この山をどんな森へと誘導しようか、急斜面のこの付近は、軽度な森林資源活用に留めて、多様で豊かな森へと戻していこうと考えています。
さて、日も傾き、再び炭化炉の様子を見ます。煙に触れて、その色と湿り具合で炭化の進み具合をチェックします。
湿り気が多い白い煙が出ている間はまだ炭化が終わっていないのです。これが青く乾いた煙に代わると、炭化終了の合図ですが、、夕方になってもまだまだ白い湿った煙・・。
煙道の煙は相変わらず、炭化中。
夕方5時、やむを得ず煙道に蓋をして隙間を塞ぎ、今日の炭化作業を中断します。タイムリミットです。
かつては山に炭焼き小屋を作り、冬場はそこに1週間も泊まり込みで炭焼き作業したと言います。
でも私たちは、寒いのでおうちに帰ります。
人の暮らしに炭と薪が欠かせなかった昭和30年代まで、かつての山村では、炭焼きは貴重な現金収入源だったのです。
こうして労力をかけて炭を焼いていると、今の社会は、大切なことをたくさん失ってしまったんだなと、そんな思いを新たにします。
次の日、炭化炉を開けてみます。
炭化の進み具合を確認する小2の息子。
炭化途中だということが分かっていながら、夜、煙道を塞いで家に帰ったために、案の定、ほとんどの竹は芯までは炭化が進んでいませんでした。
炉の中で、比較的よく炭化できた一部の竹炭は袋詰めして保存します。
竹の端材でたき火した消し炭も、貴重な土壌改良材になります。
たき火の最後にどっさりと竹をくべて一気に炭化し、そして燃え盛る炎が鎮まってきたころに、土をかぶせて火を消し、一晩置きます。
そして次の日、掘り出して袋詰めするのです。原始的なやり方ですが、少しも無駄にはなりません。
さて、未熟な竹炭は再度熱して炭化を促進します。強風の中、執念のリベンジです。
待つこと2時間。今度こそ炭化終了です。蓋の隙間から空気が漏れないように土をかぶせて、冷めるまで放置します。
この炭化炉1つでドラム缶3個分の炭焼き容量があります。
こんな悠長なことができるのも正月の良さです。正月の間に炭焼き名人を目指します。