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ちば山見学会2  房総の山は今  平成23年11月30日

 ここは房総丘陵南部、東京大学演習林から見た、県有林の山並みです。
戦後に植林された人工林のほとんどが管理放棄されている中、この森は良好な管理が今もなされています。

 植林後、30年経過した人工林です。人が植林したのであれば、良好な森の状態を維持しながら持続的に木材生産するためには管理作業が不可欠です。
 それが同時に国土の保全に直結する面もあります。
 良好に管理された人工林の中では林床の多様な植生が進入し、生態系として健全で安定した森が形成されます。

 一方、これは管理がなされていない不健全な人工林の内部です。光の届かない下枝が枯れたままの状態となり、木材としても価値はなくなります。
 光の届かない林床にはほとんど植生は育たず、生態系として不安定な状態となっています。
もやしのようになった人工林の木々は台風の度に倒れます。
 暗い林床では、鳥の鳴き声も聞かれません。命を養う本来の森の潜在能力はここでは感じられません。
 残念ながら、日本の里山の多くはここ数十年の間にこうした不健全で生態的にも貧弱な状態となっているのが現状のようです。

そしてこれは、植林後100年以上経過した杉の人工林の様相です。光が差し込む林内では中低木が階層的に生育し、重層的で安定した森の機能が見られます。

 そして、この人工林の一部で行われた木材搬出の現場を見学しました。
100年を越えて良好に管理された森が伐期を迎え、木材となります。
 伐採後の土地には新たに若い森が再生されます。

 

山の急斜面で伐採された木材は、山中に張られたケーブルを伝って土場と呼ばれる木材中継作業場まで降ろされます。

そして山から降ろされた木材を規格寸法にカットして、そして初めて出荷されます。
木材生産を通して維持されてきた千葉の里山、健康な人工林、豊富な生態系と人工林との共存は戦前までは当たり前の光景だったようです。
 それが、今や山仕事の担い手不足から、必要な管理が行き届かずに荒れてきたのが今の里山の現状のようです。

そしてこれは、房総の極相林(自然状態で土地を放置した際、最終的に生育する森の植生)の様相です。
 樹高40m以上のもみの木が主木となって、その下に樹高20m程度のシイノキなどの常緑広葉樹が見られます。その下には豊かな中低木が自然状態で生々流転しています。
 森は、上下空間の階層が多い程、豊かで安定します。
 今は温暖化の影響で、極相林の主木であったモミの木に昔日の勢いはありません。
今はこれが極相と言われますが、本来安定すべき極相が、地球温暖化と気候変動のために姿を変えようとしています。

どこまでも続く房総丘陵の山並み。これからの維持の在り方が問われます。

 

株式会社高田造園設計事務所様

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