早春の気配 平成23年1月21日
造園施工契約のため、南房総は鴨川市を訪れました。
鋸南町保田地域から鴨川に抜ける長狭街道は別名スイセンロードとも呼ばれ、田畑の畦には12月くらいから早くもスイセンが咲き始めます。
冬枯れの畔や斜面に咲くスイセンの花。この時期には、街道沿いのいたるところでスイセンの咲くのどかな風景が見られます。
この地に住まれる先人方々がかつて植えはじめ、そしてそれが広まって、この土地独特の冬の景色となっていったのでしょう。
常緑樹と落葉樹の混在する南総の雑木林を背景にした野菜畑を、畔に広がるスイセンの花が縁取ります。とてものどかで心休まる風景です。
造園を志す私として、こうした風景と共に生き、そして育ててきた方々に対して、心底からの敬意と憧れを抱きます。私はと言えば、造園を生業と志してからもうじき20年近く経つというのに、こうした素晴らしい風土の風景実現には、まだまだ修行が足りていません。。。
素晴らしい風土の風景、それはこの地を耕す地元の方が、長い年月をかけてこの景色を愛でながら、育てているのでしょう。
風土になじむ風景を作るということ、私の目指す造園は、そういうものでありたいと思います。
生活が地に刻まれて生み出されるのが私たちの心休まる風景であるならば、それを再生するという試みは、人の生き方や自然との付き合い方の自問自答にまで繋がっていきます。
今という時代、長年の暮らしが造り上げてきた美しい風景が土足で踏みにじられる今の時代、おのずと造園の時代的役割は見えてきます。
私はそこで生きたいと思うのです。