神奈川県小田原市の庭 石窯つくり 平成22年9月18日
先月にかかり始めた神奈川県小田原市Tさんの庭つくり、遠い上に工事予定日はなぜか雨になるという珍事が続き、ゆっくりと少しずつ進めています。
石窯の基礎の石積みが終了し、窯の扉部分のアーチを耐火煉瓦で積みました。
こうした窯や炉には、耐火セメントを使うことが多いのですが、耐火煉瓦積みの目地材や焼床の下地材にも、今回は酸化マグネシウムと土を配合した、古典的な施工方法を試みました。
酸化マグネシウムは、海中のにがりから精製したもので、セメントのない時代、これに土を混ぜ、セメント代わりとしてそれこそ世界中で一般的に使われてきました。
古くは紀元前、万里の長城の煉瓦の目地材をはじめ、古代ローマ時代の遺跡などにもその痕跡が見られるようです。
そして酸化マグネシウムの耐熱温度はなんと2000度以上と言います。これは一般的な耐火セメントの2倍近い耐熱強度を誇ります。
しかも、不要になれば土に戻すことができる点でも、自然に還元できずにゴミになってしまうセメント構造物よりも環境性能的に優れていると言えます。
基礎部分の石積みは、小田原市の隣、真鶴で産出する小松石と、現地の土を掘った際、地中から出てきた石ころを用いました。
こういうものはラフでハンドメイドな積み方が味わいがあると思いつつ、いい感じにラフに積むということは意外と難しいものです。
昔の暮らし人たちが生活のために積みあげた、強固で機能的で、なおかつ素朴な石積みを心掛けました。
今はまだ植栽前の殺風景な庭ですが、作りかけの石窯のユーモラスな雰囲気がこの庭を面白くしそうです。
庭つくりの過程で、こうしてモノの形ができてくる過程は本当に楽しいものです。
「石窯が欲しい」そんな面白いご要望を頂きましたTさんに感謝です。