雑木の庭の管理に想う 2 平成25年11月23日
雑木の庭 暮の手入れは私たちにとって毎日紅葉狩りに出かけるような心境です。
昨日手入れに訪れたのは千葉県柏市の庭、施工後2年が経過し、木々はいよいよ生き生きとした生命の躍動を感じさせてくれるまでになりました。
ここ1週間で急に秋色に染まったという木々は、手入れに訪れる私たちにもこの仕事の喜びとエネルギーと確信を与えてくれます。
1年間の実りの秋、思索の秋と言いますが、いろいろあった1年間の終盤を木々がこうして静かに祝福してくれるようです。
これでいいのかと、迷い続け、走り続けた1年を、「よくがんばったね。」と、木々は優しく包み込み、そして庭を作る私たちに、この仕事を続けてゆく力を与え、道筋を示してくれます。
玄関側から主庭への伝いは錦秋の道となりました。
秋の柔らかな日差しが家屋に揺れて、木々と共に生きる幸せを感じさせてくれます。
雑木の庭は入り込む日差しを楽しむ庭とも言えそうです。刻々と移り変わる日差しを受けて、庭の表情は一時も立ち止まることなく、我々を楽しませてくれます。
そして、手入れによって、入り込む日差しや光の見せ方を調整するのです。夏は木陰の庭として過ごしやすい住まいの環境を作り、そして秋の手入れでは枝葉を落として日差しを取り込む温かな庭とするのです。
雑木の庭を活かすためには手入れの仕方が大切です。大地の恵みを受けてすくすくと育つ森の高木たちを家のごく近い位置に植栽し、木々の命を最大限に暮らしに取り込むのですから、暮らしと共に木々と長く共存するためには、どうしても手入れが必要になります。
高木樹種にコナラやシイノキ、カシノキなどを主木に用いた雑木の庭が順調に生育して施工後3年目となると、厄介な雑草が姿を消して、日ごろの除草管理が非常に楽になります。日向でしか生育できない雑草がほぼ消滅し、柔らかな日陰の雑草が木々の足元でおとなしく共存するばかりになってくるのです。
コナラを主木に用いるもう一つの管理上のメリットは、成長旺盛なコナラが上部の日差しを占有するため、その下となるモミジやカエデ、その他中低木など、多くの樹木に差し込む日差しが緩和されて、枝ぶりが森の中の木々のように自然と柔らかく維持されるため、高木以外はあまり手をかける必要がなくなるのです。
つまり、手入れによって無理やり柔らかい枝ぶりに見せるのではなく、植栽の組み合わせによって木々が無理なく自然に美しい姿を維持できるようにするのが、我々が目指してきた雑木の庭の佇まいなのです。
こうした管理への配慮によって、100坪以上もの広い庭も、軽く1日で手入れできます。もっとも、コナラなどが本格的な成長を見せるのは3年経過した後で、実際にはこれからなのですが、しっかりとコントロールしていけば、年月とともにより深みのある美しさを見せてくれるようになるのです。
リビングからの庭。室内にいながら季節の変化を肌身で感じる間取りです。
和室から。床の間に飾られた枝は、手入れで落とした枝をお施主のMさんが拾い、吟味にして活けられました。
窓越しの秋の気配が窓からだけでなく、床の間を通して室内に取り込まれます。
住まい手の、庭を愛で、楽しむ心が、圧倒的に自然豊かな住環境を許容し、育ててくれる、床の間に活けられた剪定枝を見てそう感じます。
心豊かな暮らしの環境つくり、それは自然を感じとり共に生き共に楽しもうとされるお施主の豊かな心に支えられてはじめてなしえること、これからも、心豊かなお客様と二人三脚でよい庭を作り育んでいきたいと思います。
作らせていただいた庭や心豊かなお施主様が私たちの仕事への想いを支えてくれる、そんなありがたさを実感させられるのもこの時期です。