雑木の庭の管理に想う 平成25年11月20日
暮れの手入れの時期となりました。今日は千葉市花見川区の庭、施工後8年目の手入れです。
木々は年月のと共に、庭の重厚感が増してきました。
写真は手入れ後の庭です。夏の間、ありがたい木陰を作ってくれた大きな枝を落としていき、温かな日差し差し込む明るい庭へと、手入れによって庭の模様替えをするのです。
木々の合間の玄関アプローチに秋の柔らかな日差しが差し込み、何とも言えぬ、のどかな表情を演出してくれています。
赤や黄色、色とりどりの秋の葉を通過した日差しの美しさは、雑木に包まれた住環境ならではの楽しみなのでしょう。
庭の木々はとても健康です。コナラの木陰のモミジは、コナラに守られて痛むことなく、モミジ本来の柔らかな枝ぶりを見せてくれます。
生育旺盛なコナラは手入れの際に、毎年太い枝をばさばさと取り払わねばなりませんが、その木陰となるモミジなどは、ほとんど手入れせずとも、健康で美しい姿が維持されるのです。
手入れの時間は木々との大切な対話の時間です。木々と語り合い、心地よい集中力に包まれる手入れのひと時は造園者としてかけがえのない時間となり、いろいろな思考がこの時間に次々と生まれます。
成長の旺盛なコナラやクヌギを扱う以上、維持管理のために年に2回の手入れが必要になります。1回の手入れでは、木々に負担をかけすぎてしまいます。
コナラなどの手入れは大枝を付け根から取り払う作業が中心となるため、コナラの性質を熟知した者にとっては作業に時間は要しませんが、落とす枝葉の量は毎年相当な量となります。
木に登り、その木の生長具合に見合った量の大枝を外すという作業を、毎年2回行わねばならないのがコナラを主木とした庭なのです。
雑木の庭がずいぶんと普及してきましたが、雑木林の高木を構成するコナラなどを主体に扱う人と、モミジやアオダモなど、コナラ以外の、本来森の中の中高木層に収まる樹種を主木に扱う人と、2者に分かれてきたように感じます。
管理の面、成長の早さなど、コナラを取り入れて長く管理するためには、それ相応の知識の体得と技術と経験が必要です。
夏の住環境の微気候改善のためにはコナラを使いこなすことが最も有効な住環境の植栽な上、コナラを主木とすることで、その下の木々の枝ぶりがおのずと柔らかく、健全で美しい姿を維持されるという、メリットもあります。
作ったその時点での見た目が完成というのであれば、雑木の庭にコナラを用いる必要などないのですが、竣工後の住環境を心地よく緩和して住みよい環境を作るという役割を庭に求めるのであれば、やはりコナラに勝る庭の主木はない、手入れをしながらつくづくそう感じます。
もちろん、樹高8m程度を想定しなければならないコナラを扱うには、それ相応のスペースの配慮が必要になります。
環境つくりか、鑑賞目的か、目的に応じた庭つくりを追求していきたいものです。
施工後8年目の庭、成長する木々の命と共に、住環境の景色は深みを増してきます。
色鮮やかな秋の木々を楽しみながらもの思いにふけり、旅に出たような爽快感を味わえるのも私たちの仕事の大きな幸せなのだと、感じます。