山行・旅

谷川岳縦走 植生の旅 その1     平成24年7月28日

 どこまでも続く上信越国境の山々の一角に谷川連峰があります。この山々が表日本と裏日本を気候的に分断し、そしてその植生も独特の様相を見せてくれます。
 久々の山旅、猛暑の中、つかの間の夏休み、谷川連峰の縦走に出かけました。

 ここは有名な谷川連峰の難所、一ノ倉沢です。異様な霊気が漂っているようです。
 昭和初期以前からのロッククライミングの聖地、一ノ倉沢の岩場だけで、昭和6年以降だけで800人近くの遭難死者を記録し、その数は世界でも例がありません。
 圧倒的な迫力で切り立つ岩壁、生死をかけてここに挑んだたくさんの若きクライマーの心境を偲びます。

 上野国と越後国との国境となる谷川連峰。今回の山行は上野国すなわち群馬県側から入山し、上杉謙信の清水峠越えの道を途中まで辿って稜線を目指します。
 ブナ林の中のとても気持ちの良い道を登っていきます。

 湯檜曽川源流を登り始めてしばらくの間、美しく深いブナ林の中を歩きます。成熟したブナ林の深さの秘訣は、1本で大きな樹冠面積を占有する、樹高40mほどのブナやシナノキ、サワグルミなどの大高木の下に、広い林床空間が開けるという点にあるように感じます。
 大高木の下にはイタヤカエデヤハウチワカエデ、リョウブ、トネリコなどの中木、そしてその下にはクロモジなどの中低木やブナやリョウブの子供などが、高させいぜい10m程度以下までの間に密に競い合います。
 しかしその上には、ブナの樹冠の下まで広い空間が開けているケースが多く、まるで豊かな緑の中にブナの美しい幹が浮かび上がってどこまでもつながっているようです。

 このあたりの山々は東京の水瓶と呼ばれる通り、とてもおいしい水があちこちから湧き出しています。
 これは山の中腹、雪渓に端を発した雪解け水が流れ落ちています。とても冷たく、感動的なまでのおいしさです。
 豪雪地帯のに降る雪を山肌全体が受け止め、そしてその大量の雪解け水をブナの森が地中に蓄え、浄化し、夏も枯れることなくゆっくりと下界へ届けてくれるのです。

 

 ブナ林の中、沢筋の道沿いに咲くノリウツギ。7月の谷川連峰はたくさんの花が迎えてくれます。

 日本海側の沢筋に見られるエゾアジサイ。

 豪雪地域の谷川連峰周辺では、日本アルプスなどの中部山岳に比べて森林限界が極端に低く、標高1500mを超えるとほとんど一面チシマザサに覆われます。1年の半分以上の間、数mもの豪雪に覆われるこの地域ゆえ植生です。

 笹原に覆われた稜線上の小屋は蓬ヒュッテ。この日はここで一泊です。

 続きはまた。

 

 

株式会社高田造園設計事務所様

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