今週の一冊 平成24年3月2日
仕事漬けの日々、その隙間に本を読みます。読みたい本はたくさんあるのに、時間がありません。でも、時間がないからこそ、読みたい気持ちが募るのかもしれません。
今週読み始めた本です。
本の序章でこうありました。
「和辻哲郎は『風土』を著わした頃の日本住宅は、今日われわれが郷愁をこめている『民家』であった。そして、その民家は昔からあまり変わらない気候に代表される自然環境と、これに順応した人間活動との相互作用によって形成される風土に適応していた。その中で、とりわけ気候は民家の形態に直接影響を与える要素として重要な意味を持っている。」
私は最近思うに、私の仕事の柱である住環境の気候改善のための家際の雑木植栽、それは今の住宅事情だからこそ必要なことであって、かつての、日本の気候風土に適応した民家の暮らし方においては、私の仕事は必要性がなかったことと思います。
今の劣悪な街環境と住まいの敷地環境、そして気候風土に関係なく、家だけで実測可能な快適性を満たそうとする今の住宅建築の主流。そんな時代だからこそ、私たちの仕事が求められます。
しかし、これは過渡期であるべきことと、思います。
本当の住環境の快適さ、故郷の思い出と誇りを築ける街や家の在り方、今の日本の住環境、失ったものが多すぎます。
私は、今の私の仕事が必要性を失う日を夢見て、そして仕事しています。変なものですが。。。
今の文明は持続できない社会。この文明を発展させるためには、我々が謙虚になり、かつての素晴らしい知恵とたくましさを取り戻すこと、それしかないように思います。
自然と共生してきたかつての日本民家に学び、これからの時代を創造する住まいを考えようとして編集されたこの本は、13年も前、1999年、つまり前世紀に編集されました。13年前の先見性にいまだ追いつかないのが社会と言うものでしょう。危急の事態に対面しても、それでも社会全体が変わるには多大な時間がかかります。
この本の中で、建築計画原論の創始者の一人、木村幸一郎氏の下記の言葉が引用されています。
「民家はその土地の得やすい材料によって、特別の高級な科学的知識を待たないで、その土地の人たちの長い経験と習慣から構築されているので、人知の程度と周囲の自然の関係をもっとも端的に、つまり、あからさまに表している点で興味深く、且つ教えられることが少なくないのであります。」
我々の将来、子供たちの未来、それが持続できるものでなければ、どんな発展も経済的な豊かさも何の意味もありません。
我々はどうあがいても自然の一部でしかありません。どんなに科学が進化しても、我々は病気になって死ぬという普遍の事実を変えることはできません。
持続できる社会、将来の豊かな国土、そんな視点に立って社会が築かれることを目指して、自分の仕事をシフトチェンジしていきたいものです。