鹿児島県 雑木の街つくり計画 第1棟竣工 平成24年1月10日
今年の初仕事は鹿児島県姶良市での壮大なプロジェクトです。
一昨年に計画を始めた「雑木林と八つの家」街づくりプロジェクト、日本の街を変えてゆく可能性を秘めた記念すべき第一歩です。
1棟目が竣工し、本日、その雑木の外環境が完成しました。
駅前の8区画の住宅用地と小さな公園、道の広場、この小さな街全体を雑木林が包み込み、そして、そこに心豊かなコミュニティの実現、心豊かな子育て環境の提供を目指す夢の街つくりに臨み、地元の土地開発会社の堅い意志と、建築、造園の夢の結集、そして鹿児島県姶良市の協力の下、いよいよこの街つくりが実際にスタートいたしました。
この第一歩の感動冷めやらぬまま、1棟の外空間施工過程をご紹介いたします。
南に桜島、北に高千穂連峰や霧島連峰を望む鹿児島県姶良市、「まちなか森暮らし」の舞台となる分譲地の第一棟が完成しました。
そして、木一本もないこの新規住宅地に、阿蘇の自然樹木130本が搬入されました。これで1棟分です。
樹木は筋金入りの雑木の庭師、グリーンライフコガ、古閑勝則さんの見立てです。
右が阿蘇に根ざす雑木の庭師、古閑勝則さん、そして左がこの街づくり実現のために意志を貫き通した姶良土地開発有限会社社長の町田周二さんです。
植栽は庭の骨格となる雑木の主木から始まります。
街のメインストリートに面した1本目のコナラ、木の向きや角度を慎重に決めていきます。
主木が配置されると、その他の木々の配置は必然的に決まっていきます。
そして、殺風景だった家屋が木立の向こうに溶け込んでいきます。
大方の木々を植え終えて、玄関アプローチの叩きの仕上げにかかります。
住まいの景色が見る見るうちに完成していきます。
阿蘇のマサ土を叩いて仕上げた玄関アプローチも完成です。
そして、縦列2台分の駐車スペースも、マサ土の叩きで仕上げていきます。セメントは全く使わずに、マサ土本来の硬化の力に委ねます。
今回の作業中、叩きの工法について、同業者から質問の電話がありました。
「駐車場の叩きでセメントを使わずに石灰を入れると割れるでしょう。私たちはマサ土にセメントを混ぜてやっています。」
とのお話でした。
いろいろなやり方が試みられることは良いことだと思います。
その中で、決してセメントを使うことのない叩きの仕上げ方に、私は誇りを持っております。
セメントを混入するのであれば、土を叩いて仕上げるという意味はなくなってしまうように思います。
駐車スペースにおける私の工法の叩き仕上げは、定期的な簡単なメンテナンスは必要ですが、割れるということはありません。
仮に割れたとしても、それがなぜいけないというのでしょう。土の割れ目、それもまた二つとない味わいある土間の表情になることでしょう。
自然の素材を自然なままに扱うことがもたらす豊かな住環境、「ちょっとでも亀裂が入ったら瑕疵保証の対象」などとという、旧態依然のお役所的な考え方では、味わいのある愛される町など決して育まれようもありません。
私たちの叩きの場合、駐車場を仕上げた次の日には車の乗り入れができます。
「叩きの土間に石灰を混ぜると硬化に時間がかかる」と言う人もいますが、これも実際には、やり方次第なのです。
セメントを混ぜたコンクリートのような土間であれば、仕上げた次の日に車を乗り入れることなど決してできないことでしょう。
百聞は一見に如かずです。実際にやって見せることで説得力が生まれます。
そして、こうして車を乗り入れることで、より頑丈な土間となっていきます。それが私たちの造る土間の駐車場です。
そして、この駐車スペースを潤い豊かな住空間の一部として落ち着かせているのは、隣の敷地に植えた木立のおかげなのです。
隣の家を建てる前に、隣接する部分に木立を植えて、隣の敷地と繋げていきます。
この街の価値は、隣の敷地をお互いに借景として利用しあい、暮らしの景色を補い合うことにあります。このことによって、敷地面積以上の住環境の価値が生まれます。
心豊かな住環境は、家だけでは決して完成しません。外空間がそれを補い、更には敷地を取り囲む町並み、隣地の木々を活かしあうことで、住環境の価値は幾倍にも増幅されます。
雑木林と八つの家、この街つくりの試みはそこにあります。
2日目の作業を終えた時、このプロジェクトの成功を誰もが確信し、晩の宴席も盛り上がります。
志を一つにこのプロジェクトに人が結集し、そして同じ釜の飯をつつく。
仕事を終えた至福の時間は、我々にとっての永遠の宝となります。
完成の日、3日目の朝、庭の中から見た家屋の佇まい。
街の一角が完成しました。芽吹きの頃、新緑の時期には素晴らしい住まいの景色となることでしょう。
まちなか森暮らし。自然豊かな住まいの環境が駅前に実現します。
この後の7棟の植栽は全て、阿蘇の庭師、グリーンライフコガの古閑さんに委ねます。
趣旨を曲げずに果敢な行動力を持ってこの仕事を成し遂げることができるのは、全国を探してもきっと彼しかいないと私は思います。
彼との出会いがなければこの計画は決して実現できなかったことでしょう。
不思議なご縁、決して自分の力ではなく、大きな力に支えられて初めて前人未踏の仕事が創造されるということを、心の底から実感します。
全国で初めての街づくりの試みが、薩摩の地で始まりました。今日、この日がスタートです。
関係者の皆が無私になり、情熱をこめてこのプロジェクトに命を燃やします。
こうした素晴らしい方々の計画に際し、私も少しでもお役にたてるよう、心の炎を燃やします。
温かく迎えて下さった地元の皆様、そして姶良土地開発の皆様、株式会社グリーンライフコガの皆様、本当にありがとうございました。
今年の初仕事、素晴らしい仕事での幕開けとなりました。