庭造り

埋め立て造成跡地の植栽   平成27年6月16日

  お久しぶりです。高田造園設計事務所の高田です。
 前回のブログ更新から一か月が過ぎてしまいました。今日は、ただいま進行中の南房総の植栽工事の様子をご紹介いたします。


 
 アスファルト片や建設残土等の建設廃材によって埋め立てられて30年程経過した土地に家が建ち、そしてその植栽にかかりました。

 ガチガチの不毛な土地のまま、数十年が経過した、こんな場所でも、適切な改善を行うことで、木々はきちんと根付き成長し、そして植栽部分だけでなく土地全体の土質まで改善されてゆく、そんな環境改善植栽の作業工程をご紹介いたします。

 植栽するプロットごとに、下地造りからかかります。
 どこまで掘っても、決して根が進入できないようなガチガチに硬化した状態ですが、下地の外周に削岩機とツルハシで軽く溝を掘り、そして周囲数か所に縦穴を掘ります。
 この縦穴掘削も、削岩機を併用しながら掘り進まねばならず、相当な時間を要する作業となります。
 しかし、こうした地盤では、土中の空気の動きを溝や縦穴等の高低差を活かして動かすための、下地造作がその後の土中環境改善のために最も重要不可欠な造作となります。

 なにか、発掘された遺跡のようです。
 実際、古代遺跡における環濠跡や、住居外周の溝は基本的に、土壌の呼吸を促すことで快適で安全な住居環境を作ってきた名残なのです。

 下地に炭を敷いたのち、縦穴に割った竹筒を通して通気孔を造作します。
この後、縦穴横溝に剪定枝葉を絡ませていきます

 手入れのたびに、剪定枝葉はシートにくるんでストックし、そしてそれらを環境改善造作にて大切な有機物資材として使うのです。
 樹木枝葉が表土環境中で分解する過程で多種多様な微生物菌類が複合的に働き、それが土壌環境をせっせと改善してゆくのです。

 まさに、エントロピーがエコロジーに変わるのです。

 ゴミにしてしまえば厄介な汚染源にしかならないものでも、本来は上手に大地の循環の中に帰していけば、環境を息づかせてゆく力の源になる、それは大量廃棄される食品残渣や建築廃材も同じことですが、私たちは、そうしたものを、大地環境の再生資材としてすべて用い、決してゴミにはならないのです。
 そして、埋め立てられて数十年来の不毛な土地であろうが、木々を豊かに健康に育ち、いのちの循環がよみがえる環境へと再生することができるのです。

 大量消費、大量廃棄の時代の先には、大地も自然も、そして私たち人を含むあらゆる命も、力を失っていきます。見直さねばならない大切なことが、こうした環境改善造作から見えてくるような気がします。

下地の通気浸透環境改善後の植栽プロット。

 そして、その下地プロットの上に樹木を密植していきます。
こんな劣悪な土壌環境下では決して、穴を掘って根鉢を埋めるような植え方などしません。むしろ、現状の地盤よりも高めの下地地盤を作って、そこに根鉢を置いてゆくというイメージです。
 土中の空気と水、そして多種多様な菌類微生物が最も働きやすい環境をつくり、そこに根を置くことで、樹木は本来のたくましさを早期の取り戻すことができるのです。

 一か所の植栽プロットに、10本近い樹木を組み合わせて植えていきます。
この時、木々が共存する組み合わせのためには、それぞれ違う根系の性質を組み合わせて、土中にも根の伸長の階層構造をつくってゆくことが大切です。

そして埋め戻しの土には、単に良質な土をもってきて埋め戻すのではなく、必ず現地の掘削残土と炭燻炭、腐植に富んだ良土とを混ぜて用いるようにします。
 その土地の掘削残土がどんなに劣悪なものであっても、そこの土は土地の環境情報を有してますので、それを必ず用いるのです。
 土壌微生物、木々の根も、水も、土地の土壌環境情報を把握して、この土地を命豊かにしてゆけるようにシフトチェンジしてゆくのです。

 削岩機を用いて掘削したほどの砂漠のような土であっても、こうして組み合わせて攪拌、改良してゆくと、土地情報を含んだよい働きをするものへとすぐに変わってゆくのです。
 ここでも、捨てるものなど何もない、悪いものなど何もない、ということが感じられます。

 昨日現場のお手伝いに来てくれた中学三年生の女の子も、嬉々として作業してくれて、そして満面の笑顔を見せてくれます。
 一つ一つの作業工程によって、見る見るうちに環境が改善されてゆくことを体感する喜びは、大人にとっても子供にとっても変わらず、大きな喜びとなるのでしょう。

 庭の一角に建てた2坪の道具収納小屋も、古民家解体の際の廃材をふんだんに用いています。
 また、土地環境を傷めることのないよう、基礎を設けず焼いた松杭を打ち込み、それを土台としています。

植栽マウンドの仕上げは、表土の保護作業です。

 表土の保護材料には、発酵させた落ち葉とウッドチップ、炭燻炭を攪拌し、通気性がよく、森林表土の腐植のように多様な微生物活動が促されやすい状態を作るのです。

 表土をこうした素材で覆うことで、急激な乾燥によって土中深部からの毛細管の働きが途切れることなく、呼吸できる状態を保つのです。
 これで、呼吸する植栽マウンドの完成です。

 こうした、いのちの連携を活かした植栽改善によって、どんな環境においても灌水も必要なく、木々が健康に育っていき、そしてその土地が自ずと豊かに育ってくるのです。

 悪いとされる環境こそ、再生の喜びもやりがいもあります。というより、悪い環境など、本当はないのでしょう。たまたまその土地が本来の働きができないだけで、その苦しみの原因を取り除く一手を差し伸べていけば、どんな土地も必ず良くなるものなのです。
 そして、その後は自然本来の力で環境を再生していき、我々人間は極力それを見守って、あまり余計なことはしないのが一番なのかもしれません。

さて、この工事は今日で一期工事終了、来週からまた、別の工事が始まります。

 首を長くしてお待ちいただいているお客様、一つずつ心込めてこなしてまいりますので、どうかもうしばらくお待ちくださいませ。
 


株式会社高田造園設計事務所様

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