木々がつなぐ奇跡の街 鹿児島にて 平成28年3月22日
鹿児島県姶良市に新たに生まれた小さな街、「雑木林と八つの家」。
この街にようやく6棟目の家屋が建ち、そしてその家屋の植栽と、すでに植栽を終えて経過した庭の土壌環境改善作業のために、再びこの地に足を運びました。
木々と共生する豊かなコミュニティ、そこで健康に育つ子供達、、、、。そんな街つくりを夢見た地元の土地開発会社の志と理想に心の底から共鳴して、この街のマスタープランを提案したのはもう5年以上前のことになります。
このまちに一世帯目の住民が住み始めてから丸4年になります。
今ここに、5年前に私たちが夢見た、奇跡のようなコミュニティが確かに誕生した、今回の訪問でそのことを肌身で感じ、帰郷後の今も、かけがえのない喜びとこの上ない感動の余韻の中におります。
子供と大人の垣根なく、人と人との垣根もなく、この街の子供たちはいつも気兼ねなく外で遊びまわり、通りにはどこかしこに住人の集いが自然と生まれ、そしてそこに、道で遊んでいた子供たちもいつの間にか入り込んできて話の輪の中に参加する・・・・。
確かに今、しかも新たに生まれた住宅地において、わずか数年の間にそんな街のコミュニティが現実のものとなった、その感動をどう伝えたらよいか、胸いっぱいの想いを少しだけ、ここでお伝えしたいと思います。
この街に、最初に植栽したのはこの家でした。今回、この街の木々が豊かな森のように精気にあふれ、健康に育ち、豊かな生き物環境を育んでゆくよう、固くなった土壌の通気浸透改善作業を施しました。
普通の住宅地であれば、私たちはその家の施主の依頼を取り付けて作業をおこないます。
でも、この街は違うのです。傷んだ木々の様子を見て、私たちは呼び鈴も押さず、当然の如くこの庭の改善作業にかかるのです。
そして、その後いつの間にか、その家の住人の方も、近所の方も、そしてこの住宅地を企画分譲した土地開発会社の社員までもが、休日の私たちの作業に参加し、一緒に木々の改善作業を進めるのです。
木々が元気になるように、、生き物がたくさんここに一緒に住んでくれるように、街が潤い、子供たちの元気な声がいつも聞こえるよう、、、そんな共通の願いが、この街に住む人たちを育てます。そしてそれは、なにも言わずとも、この街で育つ子供たちにも、確かに伝わるのです。
スコップで土を掘って炭や枝を漉き込んでゆく、そして表土に落ち葉やウッドチップをかぶせる、熱心な大人たちの想い溢れるそんな作業を見て、子供たちは自然とそれを見習うのです。
大人は何も言いません。でも、こどもはいつの間にか作業を覚え、勝手にやってくれているのです。
5歳になるこの子は、この家の子ではなく、数軒隣の家の子なのですが、いつのまにかこの家の改善作業をやってくれているのです。
この街の庭に境界はありません。まして子供の世界に境界など、あるはずもない、町全体が子供の庭で、それを良くすることは、自分の街を良くすること、この街における大人たちの佇まいを見た子供たちは、自然とそんなことを学んでゆくのです。
この街の子供たちは家の中にこもるということがないと言います。一日中、雑木の庭が繋ぐこの街で、外で遊びまわるのです。
自分の庭も、通りも、隣の庭も、みんな同じ町の庭。子供たちはそこで伸び伸びと遊ぶ、それが今、この街の日常となっているのです。
まちの一角に設けた公園の片隅には、住民たちの手によって作られた、味わい深い落ち葉ストックができていました。そこにこの街で出た落ち葉や剪定枝、刈り草が溜められます。
木々に感謝して落ち葉を集める。落ち葉は街のごみではない。 感謝をこめて土に還す・・
落ち葉をゴミに出してしまうことがもったいなくしのびない、、。
そんな、この街の住人たちのぬくもりが、このストックの佇まいから溢れてきます。
そして今回の改善作業において、街の住人たちの愛のこもったこの落ち葉ストックで腐葉土化した腐植を、木々の根元に敷き詰めて土壌環境改善資材として用います。
土壌の通気性を改善した上で敷き詰めれば分解も早く、風による飛散も抑えられます。
今回実施した6棟目の植栽。
この街が年月と共に育ってゆくように、私たちの植栽方法も、計画を実施し始めた5年前とは今は全く違います。
見た目や、人にとって都合のよいばかりの雑木の庭ではなく、この土地に根ざした木々が健康に育ち、様々ないのちの息づく環境を育ててゆく、そして、木々やその地の生き物たちが健康に生きてゆける環境こそ、人が健康に安心して生きていける、本当の意味での心地よい環境に繋がるということ、今はそんな趣旨で樹を植え、庭をつくります。
土の入れ替えではなく、傷んだ大地を再生し、そして錦江湾岸平野独特のシラス土壌にしっかりと根を張って地元に根ざして木々が育ってゆくよう、見た目の植栽に要する手間をはるかに超える作業量を土壌環境改善に注ぐのです。
今回植栽終了した、この街の6棟目の家屋。
そして、あたらに完成した家も、新たに植栽した木々も、この街の中ではすぐに周辺の景色に溶け込み、街の中に同化していきます。
この街は、家が建つたび、それに伴って調和する木々が町に増え、街の潤いはますます増してゆくのです。
それを待ち望む住民たちは、あたらな建築を歓迎し、そして新たにここに住む家族も、街の人たちに待ち焦がれて迎えられるのです。
自ら、木々の水やりを楽しむ
女の子
土壌環境改善資材となる木炭を踏んで粉にする作業を嬉々として手伝う男の子。
子供たちがどこかしこにも佇む、子供が景色になるまち。
家が建つたび、この街の環境はますますうるおい、そして子供も大人も息づいてくる、そんな現実のプロセスを、この街の計画時点で誰か想像しえたことでしょう。
三日間の作業を終えて掃除を始めると、私たちの立ち去りの気配を感じてか、大人も子供もソワソワと、私たちの周りに集まってきます。
何も言わず、工事で汚れた道路の掃除を手伝ってくれるのは、この街の新たな住人になる女の子。
こうした光景が町のあちこちで次々に繰り広げられるのです。
もう、何も言えません。言葉もありません。この街の工事に訪れた僕たちは、夢か現実か、それを錯覚してしまうほどの幸せな感動に包まれます。
子どもがいて、大人がいて、そして木々がある、どちらを向いても美しく景色に溶け込む、、今、そんな街が現実に実現しているのです。
しかも、この街は決して高級住宅地などではなく、まちなかによくある、若い人でも手の届く普通の街の一角なのです。
決してこの街の土地を高く売ることなく、子育て世代の普通の人たちに、豊かなコミュニティと豊かな自然環境の中で暮らしてほしい、地元の土地開発会社社長の想い、そしてそれに共鳴した私たちの想い、ここに集う心豊かな住人達、みんなの夢の結集から、この奇跡の街が生まれました。
遠方の地、鹿児島での作業を終えると、街の人たちが大人も子供も集まって記念撮影。満面の笑顔で私たちを送ってくれました。
次に、この街に来るのはいつのことか、まだ分かりませんが、私たちにとって温かな心のふるさとがここに生まれた喜びを全身に感じ、次の訪問がとても待ち遠しい想いに満たされます。
次の作業、次の再会の時、街の子供たちはまた、大きくなっていることでしょう。それがまた、楽しみでなりません。
「雑木林と八つの家」 この街づくりプロジェクトは、地元、鹿児島県姶良市の、姶良土地開発有限会社社長の発案で、5年以上前にスタートしました。
そして、社長の真実の想いに共鳴して身を投げうつ覚悟で協力する人たちがいて、私たちもその一人であります。
必ず未来につながる素晴らしい街つくりのスタートになる、そう信じて疑わない人たちによって、数々の困難を乗り越えてようやく、この街もいよいよ完成が見えてきました。
最後の一棟が完成し、そして街の木々がすべて植わった時、きっと僕は泣いてしまうでしょう。
そして社長も泣いてしまうことでしょう。
そして、このプロジェクトにともに尽力し合った仲間たちと共に、抱き合うことでしょう。
その日がもう、目と鼻の先に見えてきました。希望だけを疑わず五里霧中に信念を貫き通した姶良土地開発の皆様の無私の努力に、ただ頭が下がるばかりです。
写真右が、姶良土地開発有限会社の町田社長です。
決して自分自身のためでなく、まして刹那的な現代の利益のためでなく、今の人たち、そして未来の子供たちのため、この奇跡の街の実現のためにあきらめず、妥協せず、ゆっくりと進められました。
鹿児島の地が生んだ巨人、西郷隆盛の座右の言葉に「敬天愛人」とあります。「天を敬い、人を愛す。」すべてはそこからよきものが生まれます。
心の再生、街の再生をここに実現した町田社長は「敬天愛人」を地で行く人。だから私たちも身を惜しまずに喜んで協力させていただくのです。
地元を愛する町田社長の想いが生み出した、たくさんの幸せ、子供たちが安心して伸び伸び育ってゆく、本物のコミュニティ。
この街の奇跡は確かに実現しています。これが、全国に伝播していけば、日本はどれほどよい国になることでしょう。そしてどれほど温かなものになることでしょう。
わたしたちと同じ想いで終始共に尽力くださる熊本のグリーンライフコガの皆様、そして温かな姶良市の皆様、この街の皆様、素晴らしい時間を本当にありがとうございました。