過去のブログ 『雑木の庭』

雑木の庭、主木に想うこと        平成25年9月3日

 ここは千葉県木更津市、今月末にオープン予定の美容院の外空間つくりに今日から着工です。
 新たに造成された新興住宅地は、郊外と言えども緑のボリューム乏しい街ばかり。
 そこに、この美容室に来れば圧倒的な木々の息吹を感じることのできる、心身ともにリフレッシュできるひと時を過ごせるような、そんな美容院の外空間を目指します。
 今回の一期工事では、駐車場の造成と美容室のエントランス空間に絞って施工いたします。

 それにしても、施工前、木が一本もない風景というのは何とも味気なさを感じます。
それがボリューム溢れる植栽によって、その場所の環境も空気感も変えてしまうのが木を植えるということ。
 雑木を用いた環境つくりの考え方も、少しずつ広がってきたように感じる今日この頃、今、自分の植栽の在り方を総点検しています。

 会社事務所のクヌギです。5年前にこの庭のクヌギとコナラの樹高や肥大成長管理のための手入れをやめました。この2本をとことん大きくしてみようと、そう考えたのです。
 今、このクヌギは15m程度の樹高へと成長し、胸高直径も30㎝に達しています。

 クヌギをこれだけ大きく扱える条件の庭など、街中にはなかなかないというのが実際のところでしょう。
 クヌギに限らず、私がこれまでの雑木の庭で、主木として必ず用いてきたコナラにしても、野放図に伸ばすことは、街中の庭ではなかなかできず、私の場合、樹高8m~9mを上限に、伸長を抑えるように管理しているというのがほとんどです。
 8~9m程度であれば、元気旺盛なコナラの機嫌を損なうことなく、程よい関係で人とコナラとが共存することができます。

 そして、事務所の庭のコナラとクヌギの下で枝葉を広げる2本のモミジ。これも、手入れせずに4年経過しました。
 コナラやクヌギの木漏れ日を拾い、横へ横へと枝葉を広げ、通過して差し込む庭の光をとても美しく、清らかなものにしてくれています。
 手入れせずとも、木漏れ日の下のモミジの樹高は5mを越えていません。そして、木陰のモミジはすこぶる健康で、穏やかで、とても美しい表情を毎日窓越しに見せてくれるのです。
 これも、モミジの上空で強烈な日差しを緩和してくれるコナラやクヌギのおかげなのでしょう。

 ここは、先週手入れ作業を終えたモミジの庭。施工後20年、私たちが手入れに入り始めてから10年経過しました。
 外周にシイ、カシ、サワラなどの常緑樹の他、主庭はほぼ、モミジの純林です。これも手入れに入り始めた10年前は不健康な庭で、イラガにキクイムシなど、大量の害虫に悩まさ手れていたのですが、今は何の害虫対策をせずともイラガやキクイムシの被害もほとんどなく、とても健康な庭へと変貌しました。
 樹高は5m~7mで管理しています。20本近いモミジの手入れは年に1回、一人で半日とかかりません。

 無理な手入れを施せば、このモミジたちも暴れ出し、そしてあっという間に健康も美観も損なってしまうのです。
 無理をせずにコントロールすること、木々との対話が手入れの極意です。

 これがコナラ主木であれば、最大樹高7m以内で管理するためには、気に対してかなりの負担をかけることになります。
 だからこそ、私はコナラの場合は最大9m、そしてモミジやアオダモヤマボウシなどは最大6~7mで、できれば半日陰で扱うことで、手入れによるそれぞれの木々への過度な負担をかけないように、管理してきました。

 逆に言えば、庭の中でのコナラの場合、最大9m程度の樹高を想定しなければならないということです。
 
 なぜ、私がコナラを主木に用い続けてきたか、それは、一般的な庭で扱いやすい樹種の中でとびぬけて環境改善効果が高いことが、主木として扱い続けてきた大きな要因の一つです。
 環境改善効果が高いということは、夏場の生命活動が盛んで、生育が早いということでもあります。
 しかも、この木はモミジなどと違い、日陰で扱うことができないため、成長スピードのコントロールは常に人為的な手入れ作業に委ねるしかないのです。

 樹木の大きさを抑制しなければならない一般的な町場の庭では、コナラを主木とする場合、毎年の適切な手入れが欠かせません。しかも、かなりの量の枝を払う必要があるケースが多いのです。

 環境改善効果の高さと、コナラにしか出せない雑木の生命感、私はほとんどの庭で常に、コナラを中心に庭を作ってきました。

 10年前に作ったこの庭は、コナラを用いることなく、2本のモミジを主木に用いています。
健康な庭になりました。樹高5mで管理するのにさほど手間を要しません。
 年月を経て健康で美しく維持される庭がきっと、よい庭なのではないかと思います。

コナラを扱うか、それ以外の雑木を主木に扱うか、それはそこではたしてどのくらいの樹高、どのくらいのボリュームで管理する必要があるか、そんなことも大切な判断材料にしなければなりません。

 

株式会社高田造園設計事務所様

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