苗木を育てる 平成25年4月29日
世間では連休2日目、今日は早朝から樹木ポットの水遣りに廻ります。
ここはヒノキ林の下で、高さ2m以上のポット苗を生産しています。
2mクラスのポット苗は、これまではなかなかまとまった生産がなされてきませんでした。効率が悪いせいでしょう。
しかし、このサイズの自然樹木苗は、今後の森の再生や都市緑地に自然を再生するうえで大きな可能性を感じています。
今年から本格的に始めた規格外のポット苗つくり、しかも、これまでの緑化造園樹木以外の自然植生樹木を多種類生産を目的としたポット苗つくりです。
今はまだ数千ポット、これで緑化できる面積は、広大な地球の中のわずか数千㎡に過ぎません。
会社の敷地にも所狭しとポット苗が並びます。
毎日の水遣りが欠かせません。
これまでのように、カシと言えば、主にシラカシアラカシしか生産してこなかったのが、緑化生産の現場だったと思います。効率を考えると仕方なかったことですが、長い間の緑化木生産の在り方が、自然の種を狭めてしまってきたことに気づかないといけません。
これからの時代の緑化は、未来のための多様な種の育成が、私たち緑に関わる仕事をする者の大切な使命となります。
ここには今、カシだけでもアカガシ、ウラジロガシ、イチイガシ、ツクバネガシなど、なるべく多種類の種を多数取り入れ、本当に豊かな緑化、未来につながる造園緑化を目指そうとしています。
多種類生産は、大変なコストがかさみます。
日々欠かさず水を撒くのは、小さないのちを活かすため、それ以外の理屈はないのですが、毎日早朝の水遣りは気持ちよいものです。
この、多種類規格外の苗木つくり、何のためにやろうとしているのか、水遣りをしながら、小さな木々に問いかけます。
地位のためでも名誉のためでも、もちろんお金のためでも生活のためでもありません。
これからの環境をよくするために、自分ができること、誰かがやり始めないといけないこと。
そしてそれが広がっていけば、いろいろ変わってくることと思います。
それと同時に、小さな木々との対話が楽しいから、希望があるから、なのでしょう。
水を撒いた苗木たちは、太陽に向かって生き生きとしています。
水撒きの時間は貴重な時間。
なんでも仕事を忙しくするべきではないと感じます。
自分の心をすり減らしては、どんな仕事をしても価値などない、木々が語ってくれます。
温かな心で生きていこう、そんな気持ちにさせてくれるのも、この木々のおかげです。
どんぐりからの苗つくりは、当社の体制では全く採算などあいません。
でも、小さな命がとても貴重なもの、そこに採算も生産もなく、私たちの心を育てるためにやり続けようと思います。
私にできることなど、ほんの小さなことですが、こんな私のやり方が、おのずと社員たちも、やさしく温かな心を育むことにつながったかもしれない。そう思うと、生きる勇気が湧いてきます。
ありがたいことに、どんなに早出の朝でも、社員が交代で朝早くきて水遣りしてくれます。
造園という仕事はどこもせわしなく忙しく、何かを見失いがちです。
これからは、大切なものを大切にしながら、ゆっくりやろうと思います。
木々がゆっくり時間をかけて育ってゆくように、心を育てていきたいものです。