庭造り

鹿児島県姶良市「雑木林と八つの家」植栽第三弾 平成24年12月10日

 ここは鹿児島県姶良市、日豊本線姶良駅から徒歩5分の分譲住宅地、「雑木林と八つの家」分譲区画です。
 30代40代の子育て世代の普通の家族が、利便性の良い駅前に暮らしながら、なおかつ豊かな自然と豊かなコミュニティを普通に享受してもらいたい、そしてそれが美しく自然豊かな街づくりに繋がってゆくことを夢見て、私たちはまた、この地に集結しました。

 八つの住宅分譲区画にようやく、3つ目の家屋が建ちました。そして先週、その植栽のため、再びこの地を訪れました。
 どんな住まいも木々がなければ景色になりません。無機質な材料だけで作った建物だけの景色というものはそういうものなのでしょう。
 だからこそ、家屋を美しくうるおす植栽によって町全体をつなげてゆくことが、暮らしの環境、ふるさとの街を、末永く愛されるものにしてゆくために最も大切なことなのでしょう。

 すでに植栽が終了した分譲地内の別の家屋。ここは今年の5月の植栽なので、植栽後半年が経過しました。
 本来、木々の佇まいがよくなるのはこれからなのですが、すでに落ち着いた様相を奏で始めています。

 道路に張り出すように植栽した雑木の木立。この木々が夏の通りを木陰にしてくれるだけでなく、木々の風景が町の景色と繋がって、街全体の環境をあらゆる面で改善してゆくのです。

 半年前に植栽した木立の下には今は苔がびっしりと生えていました。この苔の存在が、雑草の繁茂や表土の乾燥を抑え、そして見た目にもしっとりとした落ち着きを感じさせてくれるのです。
 植栽の際、足元に苔が生育しやすいように表土の仕上げをしているのですが、それでも半年でこれほどの苔で覆われることはなかなかありません。
 高温多雨の鹿児島の風土も、苔の生育に適しているのでしょうが、それだけでは半年でここまでにはなりません。
 この美しい表土は、毎日の水遣りや掃除、除草など、日頃この植栽地を管理されてきた方々の、心こもった作業の結果と言えるでしょう。
 毎日のように灌水し、掃除していなければ、半年でここまで美しい苔で覆われることはあり得なかったことでしょう。

 この、すでに売却済みの分譲区画の木々の水遣りや掃除を半年間、無償でやり続けた人たちがいます。
 「雑木林と八つの家」を企画し、この土地を区画分譲した地元の開発会社、姶良土地開発有限会社の若い方々です。
 彼らは交代で、朝に夕にこの分譲地に足を運び、そして植えたばかりの木々のために、日課のように水遣りや掃除、除草をやり続けたのです。
 すべては、この分譲地を美しい街にするための奉仕の作業なのです。

 全国を探しても、どこにそんな不動産会社があるでしょうか。全国のどこに、それ程の木々に対する慈しみの心で行動される不動産屋さんの社員たちがいるでしょう。

 苔に覆われた地面を見ながら、彼らの木々への慈しみの心、この街に住む方々への本心からの想いに感じ入り、感動と共に、改めてとても大切なことを教えてもらいました。
 こんな不動産屋さんが日本中にいれば、日本はどれほど美しく住みよい街になることでしょう。
 木々を植える私たちも彼らに学び、もっともっと心を引き締めないといけない、そんなことを感じさせられた光景でした。

 日程差し迫った師走の作業、1日で植栽を終わらせるべく、総勢10人以上で猛烈な勢いで植栽作業を進めていきます。

 木々が大方植わりました。このスペースは、木立の間の駐車スペースとなります。駐車場の造成や隣地との見切りの柵は植栽の後に行います。
 大切なことは住まいを美しく快適にするための適切な植栽配置であって、その合間に駐車場や玄関アプローチ、庭空間を配してゆくのです。
 もっとも大切なのは適切な植栽配置なのです。
 敷地の全体にまばらに木々を植えるのではなく、植栽はあくまでポイントを絞って凝縮し、効果的な場所に点在させてゆくのです。
 よい住空間を作り出すために最も大切なのが、この植栽スペースの配置なのです。

 これは、私が現地にうかがう前日の作業風景です。(写真提供、加治木桂子さん)
 住空間を活かすために大切な植栽配置を決めて、あらかじめ植栽予定地を掘っているのは、熊本県阿蘇市、グリーンライフコガの古閑英稔君です。
 今回、前日の作業である植栽配置の決定とその床掘り作業は彼が担いました。
 28歳の若さながら、驚くほどの的確な位置にきちんと穴が掘られていたのです。

 「好きこそものの上手なれ」とはよく言ったものです。昇り竜のように目覚ましい成長を見せる若者のモチベーションとは、どこから来るのでしょう。まっすぐに前進する彼のような若者に接していると、私たちもまたエネルギーをもらいます。

 植栽が大方終了し、表土の仕上げ作業にかかります。
 すでに葉を落とした雑木の木々ですが、圧倒的なボリュームの植栽です。

 木々の根元は土を叩き締めて、掃除しやすく苔の乗りやすい状態を作ります。つまり、植栽仕上げ後の現時点が完成ではなく、その後木々が生長し苔が乗ってくるにつれて雰囲気も快適さも増してゆくよう、作り過ぎずに仕上げてゆくのです。

 夕方、今回の植栽は終了しました。
家が建ち、また木々が町の景色を繋げていきます。作業を終えたみんなは、いつまでも現場を離れられずにたたずみます。この街つくりや木々が作り出す未来の景色に夢を馳せます。

 私たちは、また、それぞれの故郷の帰ります。この地にこの木々を残し、また次の植栽の時の再会を楽しみに、帰路に向かいます。
 植えたばかりのこの木々は、地元の姶良土地開発の方々が大切に面倒を見てくれるという安心感。
 木々の命を介した信頼関係は何ものにも代えられず、絶対の信頼が醸成されていきます。

 この街に植えられた木々をこれほど大切にしてくれる人たちがいる。この心が日本中に広がっていけば、、、、そう思わずにはいられません。

 春の植栽以降、毎日欠かさず無償で水遣りなどの世話をしてくださった、姶良土地開発有限会社の町田尚紀さんのメールを抜粋して下記に紹介したいと思います。

『  (前文略)
 夏の夕暮れ時は、文明さん、姉、私でローテーションを組み毎日木々に水やりをしました。これは大変貴重な体験でした。

 人は心地良い環境に集い、そして暮らしが生まれ、皆の想いが重なり良いまちを造る。木を育てるようにじっくりと時間をかけて造りあげてこそなんだと、身をもって気付かせてくれました。
 水やりはとても楽しいんです。水をやり続け新芽が吹いてきた時の喜び。どんぐり拾いに一生懸命な子供たちと、盛り上がる親達の井戸端会議。
 「良く根付いたわね」 「これは何て木?」 そんな何気ない会話。これまでの宅地造成では見られない風景が沢山生まれているのを感じます。
ここが完成する時を思うとワクワクしてきます。』

これが、新たな街の提案「雑木林と八つの家」を企画分譲している姶良土地開発有限会社社員のコメントです。
 日本のどこにこんな素晴らしい土地開発会社があるでしょうか。この心が全国に広まっていきますように・・・。そして日本中の街が子供達にも優しい自然豊かなものになりますように・・。
 こんな素晴らしい方々と共に仕事できる喜びと感動を、誰に伝えたらよいのでしょう。

 次回は3か月後、2月の植栽を予定しています。 このプロジェクトを見守ってくださる方々に心からの感謝を申し上げます。

 
 

株式会社高田造園設計事務所様

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