奈良・滋賀 庭の取材撮影 平成23年11月25日
ここは大和の国郡山、 西大寺本堂です。
平城京のあった奈良時代、東の東大寺に対して西の西大寺として命名されました。官寺にふさわしい壮大な伽藍があったこの地に、今は静かに佇む金堂の前、石段に囲まれたかつての五重塔の礎石の佇まいが昔日の栄華を伝えています。
来年10月発刊予定の書籍、「雑木の庭空間を作る」の撮影取材のため、奈良県の生駒市を訪ねました。
快晴の朝、版築塀の向こう側に、秋の気配が漏れてきます。
家屋が密集する住宅地の中の狭い主庭なのですが、それを感じさせない雰囲気がこの庭にあります。
この庭は昨年、京都の雑木の庭空間作家、田島友実さんによって造られました。
水音が聞こえ、デッキ際に小さな流れが伝います。11月の日差しを反射して、木々は明るく光り輝きます。
リビングに、木漏れ日が差し込み、光が揺らぎ、その表情は刻々と移り変わります。これがここに住まれるHさんご夫妻の日常風景です。1年前に造られたこの庭がHさんご夫妻の暮らしを潤し、そして今はもう、この庭のない暮らしは考えられないと言います。
1日での近畿地方撮影取材は駆け足です。奈良の次は滋賀県に移動します。
昼過ぎに、琵琶湖のほとりにたどり着きます。琵琶湖のアシ。かつてはよしずや草ぶき屋根の材料として保全され、育まれてきました。
近年、アシの需要激減と湖畔の開発によって、琵琶湖のアシ原が激減します。水質浄化能力の高いアシが消えるにつれて琵琶湖の汚染が深刻化し、そしてまた近年、アシの環境価値が再び見直されてきたようです。
ここは比叡山を望む琵琶湖のほとり大津市、田島さんの11年前の作庭です。
三角形に張り出したガラス張りのリビングが、庭の木々の中に溶け込んで、雑木林の中に佇むようです。
そして庭の雑木林は、木柵を挟んで隣接する伸びやかな街路樹と一体化してどこまでも豊かな木立が続いてゆくようです。
リビング西側は、幾重もの木立で夏の西日をシャットアウトしています。
これがこれから冬にかけて葉を落とし、今後は柔らかな冬の日差しをとり込む庭へと変わっていきます。
三角形の先端を庭の方向に張り出すリビングの様子。室内にいながらまるで雑木林の中にいるようです。
作庭後11年、毎年の手入れによって木々はコントロールされながら落ち着きを増していきます。
この2件の庭の様子は来年10月発売予定の書籍の中で詳しくご紹介させていただきます。