千葉県佐倉市の民家再生工事 上棟 平成23年2月13日
久々に快晴の日曜日、大安の今日は千葉県佐倉市で進行中の入母屋民家再生工事、いよいよ上棟の日を迎えました。
午前中の仕事を終えてから私が駆け付けた時は、すでに柱と桁が組みあがっていました。
床柱の建て込み作業の様子です。カリンの床柱は非常に重く、クレーンで吊りながら建てこんでいきます。床の間も、以前の入母屋民家そのままの姿に再生していきます。
マツ梁の算段の様子。心地よい曲がりを見せるマツの古材です。
屋根の深い、元の入母屋家屋の梁組は2重に組まれていました。元の姿のままに再生です。2段目のこの梁組材を番付に従って順番に吊り上げていきます。
梁組が終了しました。この後、母屋組となりますが、屋根組の作業は今日はここまでです。
昨年解体したこの地の入母屋家屋の2階部分を、そのままそっくり屋根組に用いているのですが、解体して数カ月の間にずいぶんとねじれが生じたようで、ここからその歪みをコツコツと修正していかねばなりません。
解体された木材は、暗く静かで乾燥した屋根裏部屋から、40年ぶりに日の目を見たのです。これまで均等にかかってきた重しが取れ、なおかつ風雨や日差し、湿気などの条件変化を受けて、まるで玉手箱を開けたようにすぐにねじれを生じるのです。
これらを少しづつ調整しながら、じっくりと組み上げていかねばならないところが古材を扱う上での難しさなのかもしれません。
杉丸太の縁桁据え付けの様子。広縁の桁になります。
作業終了後の小屋組みのシルエット。材料は全て元の民家古材を、できるだけそのまま用いています。解体された民家の材料は、縮小しつつもその姿を変えて再生されました。
古民家は木材資源の宝庫です。今でこそ、古民家再生という言葉が一つのブームとなっているようですが、日本家屋の長い歴史の中では、古材をできる限り使い回ししながら、新たな住まいつくりにそれを何度も活かすということは、当然のことでした。だからこそ日本の木造住宅は何度も解体組み立て可能な方法で建てられ続けてきたのです。
今、我々も、この素晴らしい日本民家を再生し、新たな時代にその命をつないでいきます。
棟梁に、幣束(へいそく)の作り方を教えてもらっています。今の住宅でも、昔からの慣習で上棟の際には幣束を上げますが、その場の棟梁がつくるという光景も珍しいものとなりました。
完成した幣束。
そして、幣束を屋根裏部分に取り付け、おごそかにお清めして、上棟式が終わります。この再生家屋に命が宿った瞬間と言えるのが、幣束が上がるこの時です。
今の時代に非常に珍しい、本物の入母屋家屋の新築です。これも古材がなければ、この地に新たに入母屋民家が造られることなど決してなかったことでしょう。これも地の縁というものなのでしょう。
新たな命はこれからの時代をどこまで生き抜いてゆくことでしょう。末永くその命を全うし、さらなる次世代に敬われる家屋へと育ってほしい、そんな思いを感じました。
大工の皆様、大変お疲れさまでした。そして上棟式に際して、大変な御心遣いをくださいましたAさんご家族の皆様、本当にありがとうございました。