雑木の仮植え 平成23年1月28日
先日買い付けした雑木が、当社の畑に続々と運ばれてきました。
樹木はこんな状態で運ばれてきます。
これらを畑に仮植えすると、それまで何もなかった畑が瞬く間に、陰翳美しい雑木林の様相を感じさせてくれます。
私たちが選ぶ樹木は、雑木林から掘り出したような自然な形状の樹木ばかりなので、雑木林がそのまま畑に移動してきたような印象があります。
雰囲気のある雑木の庭をつくる際、よい自然樹形の樹木を選別することが必要不可欠だと思います。
条件の良い畑で普通に育った雑木などはもはや「雑木」ではなく、何の変哲もない「庭木」になってしまいます。
野性味と躍動感のある自然樹形を庭に取り込むからこそ、よい雑木の庭になると思います。
これは、太くなりすぎたコナラを株の根元から伐って、新たな若い幹を出させなおしているところです。
根元から新たな幹を出させて若木へと交代させることを「萌芽更新」と言います。かつての美しい雑木林はこの萌芽更新によって維持されてきたのです。
今の時期に伐ったコナラの伐木は、菌類の活着がとてもよく、当社ではこうした伐木をシイタケのホダ木として利用しています。
収穫したシイタケは、当社の若い社員たちが、金欠病悪化時の非常食として収穫し、それぞれの家庭のおかずになります。
コナラやクヌギなどの雑木の苗木は密植し、この状態で2年くらい放置することで繊細な雑木らしい樹形へと育っていきます。
私は本来、樹木の生産者ではなく、造園施工者ですので、効率から考えると、わざわざ樹木を苗木から手間暇をかけて、造園樹木へと育ててゆくような作業などする必要もないと言われることもあります。その通りかもしれません。
しかし、こうして自分たちで育てることで、自然樹木の性質をより深く理解する機会にもなるし、何よりも若い社員たちの教育の場になります。
どうしたら思い描くような樹形に育ってゆくか、どのように管理したら木は人間の言うことを聞いてくれるか、元気な木の根っこはどうなっているか、そんなことを実際に若い社員たちに考えてもらいたいと思って、雑木の生産までを手掛けています。
自分たちで育てた樹木は愛着のある我が子同様です。これらの木々をお客様の庭に収めることで、私たちにとっての庭への想い入れや愛情は、単にお金と引き換えに入手した樹木を使って庭をつくることとはまったく違ってくるのです。
庭に心をこめるということ、口で言うのは簡単ですが、実際には一つの庭をつくるまでに費やした年月と汗が決めるようにも思います。
なんでも効率優先の時代において、生き物を扱うということは、それではいけない部分もあります。生き物の命には尊厳があります。
命の尊厳を踏みにじることで、人間は手痛いしっぺ返しを食らいます。それが今の口蹄疫や鳥インフルエンザに現れているように思えてなりません。
私たちは、庭に木を植えることで日々の稼ぎを得て生活しています。いわば、木は商品です。
しかし、人にとって居心地の良い庭をつくるということは、同時に木にとっても居心地の良い環境を与えてゆくことではじめて成り立つと感じます。
生き物を扱うということ、それは常に共存関係をつくるという視点を忘れてはいけません。
なんでも規格化し、格付けし、効率優先に生き物が扱われる今の時代、命のつながりを再生するという視点を育ててゆくことこそ大切なことのように感じます。