今年もお世話になりました。 平成29年12月23日
先月末、埼玉県飯能市での打ち合わせついでに足を延ばした天覧山。登り口である能仁寺から徒歩30分足らずの低山でありながら、秩父武蔵野を一望する名山で、今もなお、力強い気を放ってこの地域を守っているようです。
公私とも、心身ともに忙しなさを極め、ブログの間隔が大変空いてしまい、気が付いたらすでに今年もあと数日となりました。
振り返ると、今年も激動の一年となりました。
年の末まで、まだあと一週間ほどございますが、いろいろな出来事が起こりながらも、今年も多くの人に支えられ助けられながら、無事にまた一年を終えることができることに、心の底から喜びと感謝の想いが溢れます。
おそらくこれが、今年最後のブログ記事となると思います。
師走の静かな日曜日、心静かに今年を振り返りつつ、秋の庭や今後の私たちの活動について、少し、抱負をまとめてみたいなと思います。
天覧山山頂への道すがら、紅葉真っ盛りの枝葉が日差しを浴びて、駆け抜けた一年を謳歌するように輝きます。
そして抜けて差し込む日差しは優しく、どこまでも愛に満ちて包まれるようです。
清らかな空気と息づく木々。山体となる岩盤が、この豊かな自然環境を生み出す源にあるのでしょう。
ここ数年、加速度を増すかのように自然環境の劣化は甚だしく、乾いた森、乾いた大地ばかりが広がる中、今もなお大地のエネルギーを集めて放つような土地の精気を感じる場所に巡り合うと、何か懐かしく、いのちの源に包まれるような、そんな喜びを感じます。
さて、師走もあと残り僅か、恒例の年末手入れ行脚に休みなく駆け回ります。
ここは世田谷区、三年ほど前に竣工した庭です。紅葉真っ盛りで、手入れをせずとも光が差し込み、そして木々が喧嘩せずに枝葉をすみ分け空間を分け合う姿を見せるのは、土地の健康の証と言えるでしょう。
手入れ後の庭。
わずかな空間ですが、息づく木々は通る人の心も喜ばせてくれるようです。
私たちはこうして、以前に作った庭の手入れに回りながら、いつも美しい木々に力をもらい、そしてその幸せをお施主さんとともに分かち合うのです。
幸せな仕事だなと、いつも思うのですが、こうした時間はまた格別です。
千葉県市川市のTさんの庭も、竣工して早くも4年となります。あっという間の月日ですが、庭の木々の成長がまた、年月を感じさせてくれます。
一年ぶりの手入れですが、落ち着いた木々の成長は穏やかで、人の生活空間をあまり圧迫することはありません。手入れもそれほど手間がかかることはありません。
奥行5mに満たないスペースながら、表情豊かな木々のたたずまいは、ここが駅近の住宅地であることを忘れさせてしまうようです。
東庭テラスの佇まい。それにしても、庭は年月を経て、こうしてますます心地よく育っていきます。
よく思うのですが、庭の雰囲気が増すのは、決してその庭の環境ポテンシャルのおかげばかりでなく、そこに住む人の想いと愛情に、庭のいのちが応えてくれて、そして庭がより豊かに美しく優しく育ってゆく、そういうものなのだと感じます。
そんなことをいつから感じ始めたのか、覚えていないけど、そして、僕らがまた、毎年の手入れで庭のいのちと再会するとき、庭の木々は、待ってたとばかりにたくさんの想いを私たちに伝えようとします。
そして私たちは、人の空間と木々の健康、双方を考えて、調和へと導く自然の働きを邪魔しないように手を施す、それが庭の手入れなのだと思います。
師走の手入れ行脚、もう25年もそんな年末を繰り返してきましたが、私自身、年を重ねるにつれてますます、庭に施す自分の手入れが、おおらかというか、おおざっぱになったというべきか、、とにかく、なるべく手を加え過ぎずに自然の働きに委ねる割合を増しているように思います。
木々との向かい合い、そして、共に年を重ねるお施主さん家族との向かい合いの中で、たくさんのことを学びながら生きてゆく幸せ、師走は特に感謝と共にそんなことを感じるのです。
我が家の庭も、この時期は落ち葉の恵み降り注ぎます。落ち葉は大切な大地の恵みです。
子供たちが落ち葉を集めます。取り過ぎると土がむき出しになって寒々としてしまうので、表土の毛布として落ち葉を適度に残しながら集めるのです。
その辺のさじ加減は、わが子たちはすでに自然と体得しているようです。
集めた落ち葉をくべて芋を焼いたり玉ねぎを焼いたり。
寒空の下、かさこそと落ち葉の音に心と頭を研ぎ澄ませつつ、煙の香りと火花はじける音とを、記憶の奥に刻んでいきます。
子供と一緒にこうした時間を重ねること、そんな時間は何よりの宝なのでしょう。
そこに住む家族の心の原風景を刻む住まいの環境、そんなものをいつまでも提供し続けていきたいものです。
晩秋の我が家。木々の枝幹の影が一年で最も長く、風に揺れて様々な表情を見せてくれます。人工物では決して味わえない、自然が織り成す無限の表情、人が人として、いのちとのつながりを保って生きてゆくために、最も大切なことがそこにあるように思うのです。
木々があっての暮らしの潤いです。しかも、木々は自然で、健康で生き生きと息づいていなければなりません。
いのちのつながりは目に見えませんが、感じることはできます。見えない声や音を聞くこともできます。そして自然は常にサインを送って、私たちに語りかけようと、手を伸ばしています。
そんな自然に向き合うとき、どんな場合でも優しい心持でありたいものです。
さて、ここは千葉県佐倉市、岩富城というかつての古城のお堀跡沿いに佇む豊かな環境、ここで新たに体験ダーチャ&ゲストハウス開設の準備を始めたところです。
建物だけにとどまる古民家再生ではなく、ここでいのちのつながりを実感し、そして周辺環境を育てながら安全で豊かな環境を代々繋いできたかつての美しい暮らし方を体感していただける、そんな場所にしたいと願い、「古民家ダーチャ いのちの杜」と命名しました。
来年度のオープンを目標に、2棟の家屋改修や庭の整備を、合間を縫って進めています。
この日はいただいた大量の伐採木を薪にしていきます。
ダーチャフィールドに高田造園の事務所、それに新たな古民家ダーチャも、寒い冬を快適に過ごすのに大量の薪が必要になります。
薪は本来、自給が基本で、それもわざわざ薪の確保のために伐採するのではなく、裏山の枯れ木、落ち枝を集め、そして私たちの場合はゴミとして持て余される伐採樹木や解体材をもらってきて、それを用います。
有機物は循環させれば環境は息づき、当然ながらごみ処理という、不自然な過程が不要になるものです。
端材を燃やして、環境の再生作業に用いる丸太や杭の表面を炭化させていきます。
事務所の倉庫や置き場を片付けながらの作業です。
柔らかな日差しの中で炎や炭火を見ていると、年の瀬を感じます。
高田造園設計事務所のスタッフも、今年は大きく入れ替わりがありました。
ありがたいことに、いい若者ばかりが高田造園に定着してくれます。
すべてが移ろいながら、人と人との縁が発酵し、醸成されてゆく、そこで人はまた、温かさと厳しさの中で心の中に愛を育み、成長してゆくのでしょう。
出会うすべての方々に感謝です。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。