庭・街・風景に思う

真鶴 柏 佐倉 流山・・・そしてちば山    平成23年10月1日

 今年もあっというまに神無月に入りました。そしてまた、怒涛の1週間が過ぎ去りました。
相変わらず忙しく過ぎ去る日々に充実感を感じながら、今週もあちこち駆け回り、我がことながら、よくもまあ動いたなあと、感心半分、呆れます。
 しかしこうして日々、やるべき仕事を与えていただけるのは本当にありがたいことです。

 神奈川県真鶴半島での庭造りが再開しました。お施主のTさんの敷地からの風景です。海を見下ろす丘の中腹に、Tさんの家があります。
 絶好のロケーション、そしてその広大な敷地をこの土地や風土にふさわしい形で、整備していきます。
 この地に調和して、そしてこのすばらしい風景を更に引き立てるべく、私の造園人生をかけて取り組みます。

 そして今週は、千葉県柏市の造園改修工事も終了しました。40年近く前に建てられた入母屋造りの家屋、お施主のMさんは昨年、この家屋を現代の生活にふさわしい形でリフォームされました。
 この家屋を改修して住み繋ぐことをMさんに提案したのは、考房建築設計事務所の小堀清美さんたちでした。
 小堀さんに会うまでは、Mさんは古い入母屋民家を壊して、新たに家屋を新築することを考えていたと言います。
 Mさんから建て直しの相談を受けた小堀さんは、その入母屋家屋を初めて見た際、開口一番、「これを壊すんですか?もったいないですよ。」と言われました。
 そして、Mさんご家族も、そんな小堀さんの情熱と提案を受け止められて、この入母屋造りの家屋を改修して住み繋ぐことを決心されたのでした。

 スクラップ&ビルドが当たり前となったのが最近の日本の住宅といわれる中、折角世界の公用語となった「モッタイナイ」という思想、その素晴らしいアイデンティティを、いまこそ私たち日本人自身が見直して、子供たちが希望を持てる未来への扉へと繋げていきたいものです。

 改修された家の中から、出来上がったばかりの庭を見ます。入母屋の外観からは想像できないほどの、暮らしやすさと明るい室内、そして窓を通して庭と部屋とが心地よく一体化しようとしています。

 モダンに改修された和室から見たデッキ越しの庭の風景です。日差しが差し込むと、デッキに木漏れ日が心地よく揺らぎます。

 玄関脇から木立ち越しに主庭を望みます。
木立のフレームによって、庭の奥行きが強調されます。

 明るく広々とした庭に生まれ変わりました。現代に新たな命を吹き込まれたこの家屋にふさわしい庭を目指しました。満足できる仕上がりです。

 植えたばかりの木々ですが、この大きな家屋になじんでいるようです。
木を植えることで家屋が幾倍にも美しく引き立って見えてきます。

 デッキに落ちる日差しも柔らかく、景色の深みと時間や季節の移ろいを感じさせてくれます。

 建築と造園が心一つにして、ここに素晴らしい住空間を作ることができたと思います。
 小堀さん、お施主のMさん、どうもありがとうございました。

 そして、千葉県佐倉市で進行中の再生民家の庭造りも、再開しました。再生民家は完成し、新しく建てられたとは思えない姿に復元されました。

 左のおじさんが大工棟梁、川上徳房氏です。古材を自由自在に使いこなして、素晴らしい日本家屋を何気なく作ってしまう川上さんのような大工も、これからはますます少なくなってしまうかもしれません。
 今後の日本が失ってはいけない大切なものはたくさんありすぎます。

 再生民家の室内の様子。今となっては貴重な日本間は、心の底からくつろげる温かみを感じます。

 床の間も書院窓も天井も欄間も、もとの民家のものを再生利用して、美しくコンパクトにまとめられました。

 そして、キッチンだけはちょっとモダンに構成されました。
 家屋の再生は、単なる復原であってはならないと思います。今の時代、今の暮らしの感覚を受け入れる形へと昇華させてゆくことで、新たな時を刻む家屋の命が宿るように思います。

 素晴らしい民家再生がなされました。

 解体した大きな入母屋民家の古材は、まだまだたくさん残っていますので、その材料を使って今度は、敷地の一角に洗濯小屋を建て始めました。

 古民家は、素晴らしい古材の宝庫です。味のある洗濯小屋になりそうです。

 

 そして今日、打ち合わせに訪ねたのは、千葉県流山市、江戸川大学総合福祉専門学校です。
学校の敷地全体を使って、この土地の風土に溶け込む雑木林の中の学校へと改修すべく、造園計画を進めていきます。来年度に渡る長期計画です。

 風土の自然を再生して、その中に学校があり街がある。そんな日本の街のあり方が、いまや現実なものとなりつつあります。

 今週は、NPO法人ちば山の会議にも初めて参加させていただきました。
 ちば山とは、簡単にいえば千葉の里山を愛し活かしていこうとする人たちの集まりです。

 「ちば山会議」と言うと、森の中で夜な夜なタヌキやクマやリスなど、森の動物たちが集まって会議している様子を連想させられます。

 実際に参加して、そんな森の動物たちの集まりに近い雰囲気を感じました。
 材木屋さんに工務店、設計者、週末ファーマー、林業家にそして私のような雑木の庭師が集まって、千葉の山をどう活性化していこうか、いろいろお話しました。

 会議の中で、こんな話がありました。

「今調べてみたら、『木漏れ日』に相当する英語はないようです。
 木漏れ日を心地よいものに感じるのは日本人独特の自然に対する感性のようです。
 『モッタイナイ』が世界の公用語になったように、『木漏れ日』という言葉も、その感性も、これから世界の公用語になる可能性があると思います。」

 これからの世界、日本人はその素晴らしいポテンシャルを持続可能な社会の再生に向けて活かしていかねばならないと、改めて感じさせられた1週間となりました。
 
 

株式会社高田造園設計事務所様

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