タブノキと森の再生 平成25年7月31日
社会福祉法人進和学園の川下都志子さんのご案内で、樹齢400年というタブノキの巨木を訪ねました。
堂々たる一本の巨木がこの場所を神が降り立つ地のごとく、神聖なる雰囲気を醸し出します。
横に太い幹を大きく張り出し、森の中で一人堂々と座り続けるタブノキの巨木。そして、巨木に守られた森の気配が感じ取れます。
そして、この素晴らしい巨木の子孫を育てるべく、タブの実を採取します。
発芽したタブの実。採取の時期がやや遅く、すでに芽吹いたものも見られます。
ぎっしりと栄養の詰まった実から力強く発芽する様子に、木々の神秘と未来への希望を感じさせられます。
森の林床では、たくさんの木々の子供達が成長のチャンスをうかがっています。
こうして森はたくさんの命を育みながら、永遠にその環境を受け継いでゆくのでしょう。
そして、その豊かな森のすぐそばには、森を切り開き、大規模に造成された後に放置された、殺伐たる風景が広がります。
バブル期の開発の爪痕です。大規模住宅開発のために森を伐り、土を削り、埋め立てられた後、バブル崩壊と共に開発計画は頓挫し、開発した大手不動産会社によって無責任にも放棄されたようです。
そしてその後消えることのない広大な傷ついた大地がこうして残されたのです。
この、傷つけられて捨て去られた土地に再び豊かな森を再生しようと、取り組んでいる人たちがいるのです。
毎年6000本単位でのポット苗混植による植樹が、かけがえのない人たちの努力によって続けられています。
川下さんがはじめに案内くださったここは、今年の春に植樹したばかりの植栽マウンドです。
傷ついた大地で木々が末永く健康に育って自然と同化してゆくためには、柔らかく盛土された土壌マウンドの造成が大切です。
ここでは高さ1mの盛土、土壌改良が行われ、そこには、ここに永久の森を再生しようとする人たちの尊い想いが託されているようです。
植樹されたばかりのタブノキが、力強く新しい枝葉を伸ばしていきます。
そしてここは、4年前の植樹地です。悪条件のもとで耐えながら、2mに達した木々はここから先は競争し、お互い守りあいながら自立して生育してくれることでしょう。
実際に、植樹の後、木々が自律して生育できる段階に達するまでの育樹作業が大切なのです。
大地を傷つけて、採算が取れないとなれば無責任にも撤収し、荒れ地を残すのも人間ですが、こうした傷ついた大地を無償の努力で再生しようとするのも人間のなせること。
豊かな環境、子供たちの未来を約束してくれる豊かな大地を繋いでいかねばなりません。
川下さん、暑い中丸1日ご案内いただき、本当にありがとうございました。