谷川岳縦走 植生の旅 その2 平成24年8月2日
サイトの調子が悪く、しばらくブログ更新ができずにおりました・・。谷川岳山行報告の続きです。
峠の夕暮れ時、とても静かな蓬峠(よもぎとうげ)の小屋にランプがともります。ランプの灯りはなんと落ち着くことでしょう。下界は灼熱の猛暑というのに、少し肌寒いくらいの山の夕暮れの時間はゆっくりと流れていきます。
少しさびしげに夕日に映えるミヤマシシウド。存在感のある花です。
翌朝の谷川岳稜線。上越国境の山々が雲海に浮かび、静かな夜明けを迎えます。
人っ子一人いない縦走路を、谷川連峰の主峰をを目指して歩きます。
一面のチシマザサの藪の中、点々と美しい夏の高山植物が楽しめるのが7月山行の魅力です。足元の花を楽しみながら、炎天下の笹原をひたすら歩きます。
ニッコウキスゲ。
シモツケソウ。
ジョウシュウキオン。
クルマユリ。
そしてエーデルワイスの親戚、ミネウスユキソウです。
いよいよ谷川岳の主峰が近づきます。この切り立った岩壁が有名な一ノ倉の岩場です。
この辺りからは、これまで歩いてきた広いチシマザサの尾根とは打って変わり、切り立つ岩場の稜線を伝います。
稜線上で見かけた巨石。石の上にいかにも不安定な雰囲気で巨石が乗っかっています。
1石で数100トンはありそうです。これが山の最上部の尾根のてっぺんまで、地球の隆起によって、いとも簡単にむくむくと持ち上げられてきたのでしょう。
生きている地球。人知の感覚的な尺度をはるかに超える大地の力。そして今も地球の隆起は続いています。
こんな、むくむく動く活断層に乗っかっているのが日本であり、ヒマラヤ以西のモンスーンアジア一帯なのでしょう。
高い山があり、自然豊かでそしておいしい水の恵みを得られる反面、地震や津波、土砂災害とも我々は付き合っていかねばなりません。
きっと、克服するのではなく共存するという発想こそが大切なのでしょう。
原発事故後もいまだ人知で自然災害を制御し安全確保できると詭弁を弄する愚かな人間。どんな理屈も無用です。
名峰、谷川岳の山頂です。昨日からの縦走路では人っ子一人会わなかったというのに、山頂に着くとにわかにたくさんの観光客が行き交います。
ロープウェイを使って最短距離を登ってくれば、山頂までわずか3時間の行程です。
私のように、下から山々を超えて2日かけてはるばる縦走してくる登山者は珍しいようです。
しかし今回、昔からの峠道を登ってくることで、山々と一体感を得ることもできるし昔の人を偲ぶこともできるのです。だから山登りはやめられません。
山頂から望む上信越国境の山々。この険しい稜線が日本海と太平洋の気候を分断し、そして季節風がこの山塊にもたらす大量の風雪を深い森が蓄えて生き物を育み、そしてその水は関東を潤します。田んぼの水も関東の水道も、元をたどればすべてこの深い山々の恵みなのです。
関東に生まれ関東に育った私たちの命は、はるか上流のこの山々なくしてあり得ないのです。